下院=委員長人選で物議醸す=重要委員会に前大統領派=ニコラス、トニ下議ら

下院は6日、30ある委員会のうち19の委員長を決めたが、ボルソナロ派のカロリネ・デ・トニ下議(PL)が最も重要な憲法司法委員会(CCJ)に、ニコラス・フェレイラ下議(自由党・PL)が教育委員会に選ばれるなどの人選が物議を醸している。7日付G1サイト(1)などが報じている。
委員長は下議の人数に比例して各政党に振り分けられており、労働者党(PT)とブラジル共産党(PCdoB)、緑の党(PV)の与党政党連合が6人、野党最大政党のPLが5人で、その他は進歩党(PP)やウニオン、共和者(RP)など、主にセントロン系が目立つ。
委員長任期は1年で持ち回りのため、委員長の人選に他意はないとされ、連邦政府も人選に関しては特に気にしないようにしていると報じられているが、ニコラス下議とトニ下議の委員長選出には疑問を抱いている。
批判が特に目立つのはニコラス下議に対してだ。ニコラス氏はボルソナロ前大統領の熱心なファンの保守系インフルエンサーで、2022年に26歳の若さで下議に当選したが、予てからLGBT、とりわけトランスに対する差別発言を頻繁に行っている。昨年の3月8日の国際女性デーでの下院でのセレモニーの際には、女性用のかつらをかぶって演説を行い、そこでもトランス批判を展開。アルトゥール・リラ下院議長(PP)から叱責を受けている。
また、2023年7月には、前年10月のポッドキャストでのインタビューで黒人やナチズム、ダウン症患者に対するユーモアは「表現の自由」の現れと擁護し、「冗談は真剣に受け止めるべきではない」と語ったことが改めて報じられ、ホロコーストを軽く扱う発言やナチズムに関する発言で訴えられた人物擁護などが国内のユダヤ人関連団体などからの強い批判を招いた。また、ダウン症の人をからかう言動なども問題視された。
2022年11月には、同氏が使用するSNSのアカウントの使用が凍結されたこともある。
テラサイトはさらに、ニコラス氏は下議就任以来、教育に関係する法案を一度も提出していないと指摘している。
一方、トニ下議も熱心なボルソナロ派で、極右思想家のオラーヴォ・デ・カルヴァーリョ氏の門下生だったことでも知られている。科学を否定するオラーヴォ派の人物が憲法司法委員会の委員長を務めることにも疑問の声が上がっている。
また、トニ氏は2020年に、連邦議会閉鎖などを求めた反民主主義デモに対して資金を提供した嫌疑を持たれ、最高裁の命令で口座の公開処分を受けた。23年9月には「マルコ・テンポラルを承認しないと血の風呂ができることになる」と先住民を威嚇する発言を行い、訴えられている。
今回の委員長選出に対し、PTのグレイシ・ホフマン党首は、「ニコラス氏のような人物を教育委員長に据えるという人選はリラ議長とPLの責任」と批判声明を出している。
PTは教育委員会やCCJを巡り、委員の政党構成などで調和を図るべく、交渉を申し入れているという。だが、その場合、連邦政府のリラ議長への依存度はより高まるであろうと見られている。