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「国民の権利」牛肉食べられず=経済危機のアルゼンチン国民

2024年5月1日

価格上昇により年間牛肉消費量が昨年比で18・5%減(4月30日付G1サイトの記事の一部)
価格上昇により年間牛肉消費量が昨年比で18・5%減(4月30日付G1サイトの記事の一部)

 バーベキュー好きで知られるアルゼンチン人だが、経済危機の深刻化で消費が30年来で最低水準に落ち込んでいる。一人当たりの年間牛肉消費量は1年間で18・5%も減少し、肉屋の売り上げが低迷したことで価格を押し上げ、多くの人が肉料理「アサード」を楽しむことが難しくなっていると4月30日付G1サイト(1)が報じた。
 オープンデモクラシーサイト23年4月10日付記事(2)の冒頭には《アルゼンチンで牛肉を食べることは、国家アイデンティティの一部であるだけではなく、事実上、歴史によって保証された国民の権利です》とある。
 アサードは、肉を炭火でじっくりと焼くアルゼンチン式バーベキューで、普段の食事だけではなく、パーティーや休日など人々が集まる場面で提供されることが一般的だ。肉を囲んで一緒に料理を楽しむコミュニケーションの機会として重要な役割を果たしており、まさに「国民のアイデンティティを象徴する料理」とされている。
 アルゼンチン食肉および食肉加工品商工会議所(CICCRA)によると、2023年の一人当たりの年間牛肉消費量は、52・3kgだったのに対し、2024年は42・6kgに減少している。
 グローボ局の取材に応えた肉屋店主のアルベルトさんは、その日の売上げはたった6件しかなかったと語った。「以前は1日に20〜30人のお客さんがいたけど、今は閑古鳥が鳴いているよ」と説明した。
 彼は、値上げを余儀なくされている理由を客に説明する方法がないと言う。月給は20万〜23万ペソ(約3万6千〜4万1千円)であるのに対して、1kgあたりのロースビーフが8300ペソ(約1490円)もするのでは購入は難しい。
 世界最大の牛肉輸出国の一つであるアルゼンチンとしては、最悪としか言いようがない状況下に置かれているのだ。今、同国の中流階級が肉を買う余裕がないというのは、同国を襲っている経済危機の悲しい現実だ。というのも、アルゼンチン産の肉は国際的にも高い評価を得ているため、通貨ペソが最悪に弱い状態の中で国内消費よりも輸出に回されてしまう傾向がある。
 アルゼンチンにおける畜産の歴史は、スペイン人の入植まで遡る。その広大な平原地帯には豊かな牧草地が広がり、家畜の飼育に精通するヨーロッパからの移民が発展を促した。食肉輸出は、20世紀初頭の国の大きな成長に一役買った。アルゼンチンが世界で最高の肉料理で知られるようになったのは、そんな歴史からだ。
 それに加えて、肉目当てでアルゼンチンを訪れる観光客は少なくないという。ブエノスアイレスのサンテルモ市場に店を開くシェフ、ロドリゴ・モレイラさんによると、経営は非常にうまくいっていると言う。シェフの説明によれば、国際価格から見れば、アルゼンチンの肉は非常に経済的だという。
 ブラジルから訪れていたタチアナ・ボテーリョさんは、「私たちが何度もここに来る理由は、なんと言っても肉だわね。今日はスプーンで切れるほど柔らかい肉を食べたわ」と話した。彼女のパートナーであるファギネル・ムジモトさんは「以前よりも少し高くなったけど、まだ旅行に来られる。アルゼンチンの人々がこの困難を経験していることは、残念に感じているよ」と語った。


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