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ムーディーズ=ブラジル国債の格付見通し引き上げ=専門家は「不適切」と評価

2024年5月3日

ムーディーズが信用格付の見通しを上方修正(Foto: Marcello Casal Jr/Agência Brasil)
ムーディーズが信用格付の見通しを上方修正(Foto: Marcello Casal Jr/Agência Brasil)

 米大手の格付会社「ムーディーズ」は1日、ブラジル国債の信用格付の見通しを上方修正し、「安定的」から「ポジティブ」に変更した。現在のブラジルの格付そのものは「Ba2」で保たれたが、将来的にこの格付を引き上げる可能性を示唆したと、2日付ヴァロール紙など(1)(2)が報じた。
 同社は見通し引き上げの理由として、ブラジルの経済成長への前向きな期待と、緩やかではあるが、財政再建が進んでいることを挙げた。
 同じく主要格付会社である「S&P」と「フィッチ・レーティングス」は昨年、ブラジルの格付自体を上方修正した。しかし、これら3社の評価では、ブラジルは依然として「投資適格」と呼ばれる、最高評価を受けた国々を下回っている。
 1日に発表されたムーディーズによる評価では、ブラジルの国内総生産(GDP)の成長見通しは、政府によって実施された改革と、「公共政策の将来の方向性に関する不確実性を低減させるために政府が設けた制度的な障壁の存在」により、コロナ禍前よりも堅調であるとした。
 2024年と25年のGDPは平均2%前後の実質成長が予想されており、中期的には、2015〜19年に起きた景気後退(リセッション)で見られた平均0・5%の後退を上回る拡大が見込まれている。
 同社は、「労働市場の強化と実質賃金の上昇によって国内需要が促進されるため、向こう数年間の成長は広範囲に及び、産業部門とサービス部門の両方が拡大すると予測している」と説明した。
 また、金融政策の枠組み改善、中央銀行の独立性の強化、国有企業のガバナンス改善、ビジネス環境強化のための施策も強調され、「今後の税制の見直しは、実施に時間がかかるだろうが、注目すべき構造改革でもある」と評価した。
 財政については、昨年導入された枠組みにより、財政再建が徐々に進むと予測しており、経済に何らかのショックが起きない限り、数年以内に政府債務が安定すると予測した。ただし、政府が歳入増に依存し、歳出削減能力が制限されていることがリスクとなるとも指摘した。
 「Ba2」格付の維持は、ブラジルの「財政力はまだ相対的に弱い」ためで、国の負債の多さと支払い能力の弱さに起因している。
 同社は格付引き上げの条件に、基礎的財政収支と財政赤字の改善により、財政政策の信頼性を高めることや、GDPの強力な成長継続を挙げている。一方、マイナスリスクには、財政再編のコミットメントの弱体化や、それに伴う信用プロファイルの質に不利な影響を与える可能性を挙げた。
 市場はムーディーズによる格付見通しの引き上げを好意的に受け止めたが、政府が2025、26年の基礎的財政収支の目標を引き下げ、市場の緊張と国内資産の損失を引き起こしてからわずか2週間後の発表だったため、関係者からは驚きの声が上がった。
 元国庫局長でオリス・パートナーズ共同経営者のカルロス・カワル氏は、近年の政府が構造改革や枠組みを弱体化させようとしていることが、ムーディーズが指摘した要因に逆行していると指摘し、見通し引き上げは最近の政府による措置を是認するものと考えるべきではないと主張した。
 ゴールドマン・サックスのラ米マクロ経済研究部門ディレクターのアルベルト・ラモス氏は、格付の新たな方向性はポジティブな動きと考えているが、予想外のタイミングだったとし、「財政への懸念は軽減されるどころか、増大している。税制改革を含む改革に関しては、まだ多くのことが定義されていない」と指摘した。
 サンパウロ市の投資会社REAGのチーフエコノミスト、マルセロ・フォンセカ氏によれば、ムーディーズによる格付の変更は、財政目標の変更などが考慮されていないため、「不適切だ」と評価した。また、柔軟な財政制度への移行が国を安定させるわけではなく、財政目標の達成も非常に困難であると指摘した。
 一方で、この変更が資産価格に大きな影響を与えることはないとし、ブラジルへの投資のリスクは明確であるため、投資家は影響を受けないだろうと説明した。


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