《記者コラム》目標が同じなら近づける=リオ・グランデ・ド・スル州の大水害に思う

リオ・グランデ・ド・スル州豪雨は、州全体に及ぶ災害であることや死者や不明者の数などでも、同州最悪の自然災害となっている。昨年も大水害に襲われたタクアリ渓谷では、傷跡を乗り越え、新しい一歩を踏み出した矢先に再び起きた水害に失望感を隠せない人も多い。
その一方、自分も被災者なのに、寝る間も惜しんで救助作業にあたる人や、ボランティアとして、または派遣されて現地に入って救助、支援活動を行う人、自分は行けないけど、せめて必要な物資などをと考えて寄付を行う人の姿が、困窮している人達を慰め、後押ししていると信じたい。
被災者らが人の鎖となり、救助ボートを引っ張る姿や、ボートの中の救助者を被災者のボランティア達が抱き上げて車いすに移し、安全な場所へと向かう姿は胸を打つ(5日付G1サイト(1)参照)。水害で家や資材を失い、車中生活を始めた人が、「今生きていることを感謝している」と話す姿からは多くのことを教えられる。
他方、5日付アジェンシア・ブラジルなど(2)(3)(4)(5)によると、災害前は対立姿勢が目立った政界では、三権代表者が揃って現地を視察し、同州への支援を柔軟、迅速化させるための法案提出や審議を日を開けずに行っている。この変貌ぶりにはあの対立は何だったのかとの思いさえ生じた。
一連の動きを見て思うことの一つは、目標が同じだと、互いの距離が縮まり、近づけるということだ。三角形の底辺にある二つの点が頂点に向かうベクトルに乗れば、互いの間の距離が縮まるが、異なる方向に向かうベクトルなら距離が開いていくのと同じだ。
水害後はサッカークラブ・グレミオのスタジアム内売店が襲われ、オリジナルグッズなどが持ち去られたとか、救援物資や被災者を運ぶボートを狙う強盗発生といった報道も流れている(6日付G1サイト(6)参照)。

また、連邦政府は州民を助けていないとか、空軍は機敏に動かない、陸軍と連邦道路警察が援助トラックを阻害するなど、軍や連邦道路警察、省庁などの諸機関への信頼や国の対応能力への信頼を揺るがすような虚報も流れており、連警が捜査に乗り出すといる悲しい話もある(6、7日付アジェンシア・ブラジル(7)(8)参照)。
こんな時こそ力を合わせて対処するべきなのに、自分のことしか考えない行為や、何もなければ不要なことに警察や治安要員を割かせるような事態のせいで、必要なことに向ける力が削がれてしまう。
子供達にはよく、情けは人の為ならずとか、人を批判する時、2本の指は相手を指しても、残る3本は自分を指すと話してきた。ポジティブなエネルギーは人も自分も助けるが、負のエネルギーも回り回って自分に対して負の結果を生むのではないだろうか。
他人の痛みや悲しみを自分の痛みや悲しみとし、共に乗り越えようと手を差し伸べる時、一つの目標を達成できたと喜ぶ時、互いの距離は縮む。手や指は、批判のためでなく、握手をし、拍手をするために使いたい。(み)