《記者コラム》先が見えない辛さ=RS州大水害の中で

リオ・グランデ・ド・スル(RS)州大水害は、被害が及んだ範囲や被害額(全容は未判明だが)、犠牲者数など、どれを見ても国内有数の自然災害だ。
インパクトの最も大きかった4月末から1週間の豪雨後も雨は降り、水がひききっていないところに新たな洪水が起きる可能性さえある。
22日のニュースでは、日頃から船でなければ行き来できない島に馬などの動物が孤立し、食べ物を運び込んでいると報じられている。
こんな状態では、被害額の計算や、商業施設、工場、輸送網、公共交通機関が正常化する時期の予測は困難だ。復興・再建策確定のためのデータにも事欠く事態となっている。
先行きが不透明な状況下で悩み、苦闘しているのは、RS州内の行政機関や企業、州民だけではない。一例は、同州からの製品や原材料を待っている州外の人や企業だ。フォルクスワーゲンが部品不足を理由に、聖州内3工場で20日から10日程度の集団休暇に入った(20日付G1サイト(1)参照)のは具体例の一つだが、部品を提供していたRS州の工場がこの期間中に操業を再開できるかは保証されていない。
このことは、マルシオ・デ・リマ・レイテ全国自動車工業会(Anfavea)会長の、「RS州大水害による業界へのインパクトを知るのはまだ無理」という言葉からも明らかだ。同会長は、「(RS州の部品供給者や工場と)連絡を取るのも困難で、一部のサプライヤーや企業で何が起きたのかは私達も知らないし、彼ら自身もわかっていない。現状では状況を詳細に評価できない」とも語っている(21日付アジェンシア・ブラジル(2)参照)。
この状態は自動車産業だけではない。ポルト・アレグレ市では北部や中央部以外の地区の水が引き、家や道路、商業施設などを清掃する人の姿が報じられているが、多くの場合は家財道具や電気製品などが使い物にならなくなり、全てまたは大半を買い替えなければならない。
電車の駅やバスターミナル、市場なども清掃が行われたが、いつから機能し始めるかは不明だ。原材料や機械類がダメになり、操業再開のめどが立たない工場なども多い。家を失い、帰る所がない人や、家は残っているが次の水害が怖くて戻れない人もいる。

ゼロからではなく、マイナスからの再出発といえる人達には、政府支援や国内外からの寄付などが今を生き抜くための唯一の方法かもしれない。ボランティアとして駆け付けた人達もいつまで留まれるかわからない。
自分達だけで決められないことや自分達の思いだけでは動かないことが多いと、不透明感は増し、不安が募る。
災害関連の記事を書く時は常に、現場に飛んで行って人々の肩を抱き、共に働くことができないことがもどかしくなる。先を照らす光が見えず、トラウマさえ起こしている人達も、脱出の道は必ずあり、世界中の人達が見守っていることを信じて、この苦境を乗り越えられるよう祈らされている。(み)