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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=1

2024年7月5日

第一章

 ブラジル!サンバとコーヒーの国。
 わけても赤道に近いサルバドール港の街は陽気だった。
 暑い一日がやっと終り夕暮れになると、楽士たちがあちこちの公園の音楽堂で賑やかなサンバを撤き散らす。
 サンバの音楽は海からの微風に乗ってヤシの葉をそよがせ、涼しさと憩いをリズムの打ち水のように露路の奥まで運ぶ。
 コルネットのくぐもった高音やドラムの力強い響きは、波止場に並んだ葉巻やココアの輸出商会の重々しい金文字の看板を飛び越して、港内に投錨している外国船の人々の旅情までもかきたてるのだった。

 背後から残照を受けてイギリス汽船の甲板に五人の日本人の若者...

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