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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=10

2024年7月24日

 だから、皇国移民会社の通訳募集に応じたのもブラジルに興味があった訳ではなく、ましてや移民事業に共鳴したのでは更になかった。ひたすらに外国への憧れにすぎない。モスコーを通ってヨーロッパ大陸やロンドンを見物できるという条件に、一も二もなく飛びついただけだった。それは平野運平だけでなく、他の四人の仲間も同じだった。
 移民たちは列車の行手に転がっている金儲けに夢中になって浮かれている。彼はまだ二十二才だった。金儲けのことはさし当たってどうでもいい。数年通訳をしてから、スペインへ行こう、と慢然と思っていた。
 スペインへ行って何をしようというアテはない。ただ行ってみた...

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