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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=13

2024年7月30日

 停車場の前に牛車が二台待っていた。車輪が大人の丈ほどもあって、一台を八頭の牛で曳く大掛りな牛車だった。
 数人の男がそのそばに立っていた。
 一人の男が移民の群れに歩みよって来た。中背で暗い褐色の髪をした五十過ぎの年令の痩せた男だった。平野も前へ進み出た。
「私はサルトリオ。グアタパラ農場の支配人だ」
 と男は言った。
「私、日本通訳、平野運平です」
 二人は握手した。
 仕事の上で紹介された場合は、力をこめて相手の掌を握った方が活動的な信頼感を与える、というようなことをすでに理解していた。サルトリオ支配人の心をつかむような意気込みで、運平は握手した...

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