site.title

小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=30

2024年8月31日

 サルトリオ総支配人はモーニング・コーヒーを飲んでいた。別名を小さな昼食と呼ぶだけあって、テーブルには種々のパンや果物やチーズやハムがピカピカに輝く銀器に盛られて、白い服を着た黒人の女中がサーヴィスしていた。
「よう、イラノ。何の用かね」
 サルトリオは気軽に声をかけた。
「ま、一緒にやらんかね」
「じゃ、コーヒーだけ」
 と断って彼は坐ったが、
「私の名はヒラノ。イラノではないです」
 と言った。
 ポルトガル語にHの発音はないので、ハヒフへホはHが脱けてアイウエオになる。例えばアサヒはアサイ。ハナはアナ。大抵の人は面倒臭いからそのままにしてしまう...

会員限定

有料会員限定コンテンツ

この記事の続きは有料会員限定コンテンツです。閲覧するには記事閲覧権限の取得が必要です。

認証情報を確認中...

有料記事閲覧について:
PDF会員は月に1記事まで、WEB/PDF会員はすべての有料記事を閲覧できます。

PDF会員の方へ:
すでにログインしている場合は、「今すぐ記事を読む」ボタンをクリックすると記事を閲覧できます。サーバー側で認証状態を確認できない場合でも、このボタンから直接アクセスできます。

Loading...