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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=44

2024年9月24日

 その下に「山羊町」があった。山羊町から平坦になり、ずっと向うに百軒長屋が幾つも重なっていた。その辺が農場の中心だった。百軒長屋の右手に本部の施設が見えた。
 それらの施設のはるか向うに、リンコン河のゆったりした流れの一部が光っていた。
 運平は丘の頂きに馬をとめて、景色を眺めた。すっかり馴染めず心細く感じたのだったが、今ではこの拡がりが快かった。針の一点のような自己の存在が、この風景の全てと緊密に繋がっている実感にあった。
 彼は肩の重荷が降りたような明るい表情をしていた。
 思えば、この二年は苦しかった。破格の昇格は負担すぎた。サルトリオの信頼に応えると...

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