元ボクサーの遺族が脳提供=慢性外傷性脳症研究のため

サンパウロ総合大学医学部(FMUSP)が25日、慢性外傷性脳症(CTE)の研究のため、24日に亡くなった元ボクサーのマギラ(本名:ジョゼ・アジルソン・ロドリゲス・ドス・サントス)の脳の受け入れを認めたと同日付アジェンシア・ブラジル(1)が報じた。
CTEは変形性の病気で、マギラの場合は、繰り返し加えられた頭部への衝撃が脳細胞に影響を与えたとして、18年前にパンチドランカーと診断された。
マギラやその遺族が生前に脳の提供を決めていたことは、サンパウロ州議会で行われた通夜の席上、未亡人となったイラニ・ピニェイロ氏が明らかにした。
FMUSPによると、マギラの脳は、同大医学部の老化研究バイオバンクがアクセスできる3人目のアスリートのものだ。FMUSPは既に、世界チャンピオンにもなった元ボクサーのエデル・ジョフレと1958年のサッカーのワールドカップで優勝したブラジル代表チーム主将だったベッリーニの脳の提供を受けている。この二人もCTEと診断・確認されている。
FMUSPによる研究は、個人から採取した組織の断片を分析することによる解剖学病理学的な診断となる。神経内科医でブラジル神経学会頭蓋脳損傷科学部門コーディネーターのマリア・エリザベス・フェラス氏は、「予防が最大の目標だが、早期診断を下せれば、個人が頭蓋ショックを受け続けるのを防ぐことができる。CTEやその疑いがあるという診断を早期に行えるような臨床検査や画像検査があれば、予防をさらに発展させることができる」と発言。また、彼らのようなアスリートの脳の組織が利用できることは研究や科学にとって非常に重要で、その結果は全ての人に返ってくるという見解も示した。
CTEは2002年に神経病理学者のベネット・オマル氏が発見した。彼は、50歳で心臓発作を起こして亡くなったアメリカンフットボール元選手のマイク・ウェブスターの遺体を解析し、脳症と診断した。
この研究結果は3年後に発表され、ナイジェリア系米国人の同医師は、動揺したアメリカンフットボール・リーグ理事らからの脅迫も受けたという。だが、10年以上経ち、新たな研究や選手からの訴訟を受けた同リーグは脳震盪に関するプロトコルを確立。試合の安全性を高める技術に投資した。
CTEは長年に及ぶ脳への無数の影響の結果で、環境や遺伝的要因もあるが、時間の経過と共に発症し、非常に深刻な状態に陥る病気だ。アスリートの場合、引退後に発生することも多いという。
フェラス氏によると、脳損傷を負っても意識を失わない例も多いが、失神していなくても、頭部に繰り返し衝撃を与えると、脳嚢内の脳が動き始める可能性があるという。
また、3月に出た機関紙によると、2023年は、治安監視ネットワークが監視している9州中8州では24時間毎に少なくとも8人の女性が家庭内暴力の被害者となったとし、家庭内でパートナーその他から慢性的に家庭内暴力を受けている女性は変性神経疾患を発症する可能性があると警告。なお、変性神経疾患は子供にも起こり得るとも述べている。