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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=68

2024年10月29日

 三人家族で一人抜けたら一家の浮沈にかかわる。二人では労働力不足で、まとまった仕事はできないのだ。ただ好き合ったからといって、おいそれと一緒にさせられない運平も馬太郎に頼まれて仲に立ったが話はまとまらなかった。
 その娘の家族も入植している。早く豊かになって息子が結婚できる日を母親も楽しみにしていたのだ。
「早く直ってくれ」
 内心の絶望を隠して、笑顔で言った。
「……」
 彼女の乾いた唇の端を微笑が弱々しく通りすぎた。すっかり白くなってしまった髪が乱れて、山姥のような印象を与えた。
「アッアッ‥‥‥ウッ」
 苦しそうに勝馬がうめいた。
 額に手をあ...

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