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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=71

2024年11月1日

 運平は腕組みをしたまま溜息をついた。
人の群れからポツンと離れて、定一少年がしゃがんでいた。山下永一の親類の子だった。叔父と一緒にブラジルへ行くといったら親が喜んだというくらい、近所迷惑の腕白小僧なのに、今朝から元気がなかった。
 「どうした?」
運平より早く永一が驚ろいて声をかけた。
 「家長、ボク寒い」
少年はそう言うと遠目にも解るほどガタガタと震えだした。
 「いかん、マレッタだ」
 永一が少年を背負って小屋へ駆けていった。十三才の少年を負って木株と泥の径を急ぐから、後から見ると滑稽なほどよろけているが誰も笑わなかった。
 これで六人……胸の...

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