下院=週6勤務か週4で激論=PSOLがPEC提案=左派対保守派で二分

現在、下院で、これまで商業施設や飲食店を中心に採用されていた「週6日労働(エスカーラ6対1)」を終わらせ、「週4日勤務」を新たに採択する憲法改正補足案(PEC)を推進する動きが出ている。この問題はネットなどを通じて議論が進み、世論が二分された状況となっている。
問題のPECは、ブラジル初のトランス連邦議員としても知られるエリカ・ヒルトン下議(社会主義自由党・PSOL)が6カ月前から、下院に提出するための署名を集めているものだ。同法案を下院に提出するための署名活動は、下院内の左派議員を中心に進められている。(1)
それに対して、ボルソナロ前大統領三男のエドゥアルド下議を中心とした自由党(PL)の下議たちが7日、反エスカーラ6対1の動きを支持しないことを下院の席で発表。これを機に、左派、保守派共に議論がさらに進んでいる。同件は先週末から今週にかけてネット上で最も話題のトピックとなり、各メディアも特集記事を組み始めている。(2)
エリカ下議が提出準備を進めているPECは、従来のブラジルの労働基準となっているエスカーラ6対1が唱える「休みは週1日、1週の労働時間は44時間」を「週4日労働、1週の労働時間は36時間」という労働形態に変えようというものだ。
同下議は、新法案に従えば、「労働者の健康に関する権利が考慮され、労働効率がより良くなり、労働内容の向上も図れる」という。
今回の提案の背景には、労働者の間で盛んになっていたVAT運動がある。「労働以外の人生(ヴィーダ・アレン・ド・トラバーリョ)」を謳う運動では、週4労働の新しい基準を盛り込んだPECを連邦議会が承認することを求めており、すでに150万人の署名が集まっていた。
この法案に関し、労働省は「多くの人の間で話し合われるべきこと」としているが、「実現可能なもので健康には良いもの」との見解も示している。
また、G20加盟諸国と比べると、ブラジルの1週における平均労働時間39時間は、構成国中7番目に高い数字だ。
だが、その一方、エスカーラ6対1が崩れた場合の社会的影響を恐れる声も多い。休みを多く取ることによる産業の生産性低下や、飲食やホテルなどの業界で雇用上の混乱が起こると考えられているからだ。
経済学者のペドロ・フェルナンド・ネリー氏は、「新法案通りにことが進めば、企業は正規雇用をやめ、解雇も起こりうる。零細企業はやっていけなくなるだろう」と、雇用問題に関しては逆効果になると見ている。
労働時間短縮は、これまでも連邦議会では強い反発にあってきた議題でもある。2009年には「週の労働を40時間以内」、2019年には今回と同様に「36時間以内」の提案が行われてきたが、いずれも全体審議にかけられる前の憲法司法委員会(CCJ)の時点で却下されている。今回の法案はPECであるため、全体の3分の2以上、下院の場合だと343人以上の賛成が必要となる。(3)
また、この法案が下院で審議されるためには下院の3分の1の171人以上の署名が必要だ。11日の時点では134人の署名が集まっているという。(4)