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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=84

2024年11月22日

 トボトボ歩きながら、今日は桃の節句だと想い出した。
 去年グァタパラでは女の子がいる家で共同で雛祭りを賑やかにやった。運平も呼ばれて甘酒をのんだ。ブラジルに来て産れた子が多いので〝二才、三才の女の子たちばかりで色気がないなどと憎まれ口を叩いて皆を笑わせたりした。
 運平は立ち停った。
 死んだという吉武守の誕生日が桃の節句だった。母のサトに負われてあの日も来ていたが、父の亥作が
「チンチンをつけて三月三日に生れやって」と言っていたのを覚えている。すると、守は満二才の誕生日に死んだことになる。

 亥作もサトもひどいマラリヤをやっている。サトもすぐ死ぬだろう...

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