リオ・グランデ・ド・スル州=干ばつで農業生産に痛手=輸出や物価にも影響か

昨年4~5月は大水害に見舞われたリオ・グランデ・ド・スル(RS)州が干ばつに悩まされ、大豆や牛乳などの生産に痛手が出ている。同州は国内3位の穀物生産州でもあり、輸出や物価への影響も懸念されていると30日付アグロリンクなど(1)(2)(3)(4)(5)(6)が報じた。
同州では12月以降降水量が減り、西部中心に30日以上(8日現在で40日以上との報もあり)雨が降っていない地域もある。少雨・干ばつは、種まきの時期をずらすなどの工夫を凝らしても、正常に育たない、実が入らないといった問題を招き得る。
問題がより深刻なのは西部で、サンボルジャ、イタキ、ウルグアイアナ、サンチアゴ、アレグレテなどでは、土壌の水分不足と極度の暑さが相成り、植物の水分代謝能力が低下。葉から水分が急速に失われ、水ストレスがさらに増すという悪循環も見られる。
少雨・干ばつと高温はラニーニャ現象によるもので、同州西部では大豆とトウモロコシに50%以上の損失が出ているという。ラニーニャ現象は比較的短期間で終わる見込みというが、種まきから50日経てば60センチ位に育っているはずの大豆が20センチ足らずというサンタローザの家族農のように、深刻な報告が出ている。
また、予想機関は異なるが、21日には1ヘクタール当たり61俵と見られていた大豆の生産性が47・8俵に落ち、大豆は21%の損失を被るとのRS州農業協同組合連盟(FecoAgro/RS)の予想を報じていたのに、27、30日には、損失は50%以上と報じられているなど、深刻さも増している。
干ばつの影響を受けているのは大豆やトウモロコシだけでなく、牧草が育たなくて牛の乳が出ないという報告もある。また、灌漑用水や魚養殖用の水、人や家畜用の飲み水、食肉加工などで使う工業用水なども不足するなど、様々な分野で影響が出ている。
RS州南部では年末の集中豪雨で大豆畑が泥水で洗われ、栽培面積の20%を失った農家があったが、中央部や西部、北部は干ばつの影響が続きそうと、地域差が大きい。だが、いずれの場合も損失が生じており、州家族農業労働者連盟(Fetraf)などは4年連続で赤字になると見ている。この状況は、負債増や家族農の離脱増への懸念の種となっている(24日付スル21サイト(7)参照)。
なお、衛星写真などは、パラナ州やサンタカタリーナ州、マット・グロッソ・ド・スル州でも少雨や干ばつによる減収が起きていることを示す一方、大西洋上の亜熱帯前線と気圧の谷で生じる南大西洋収束帯(ZCAS)により、南東部、中西部、北東部で激しい雨が長引く可能性も指摘。長引く雨は水害発生の可能性を高めるし、日照不足も農業生産には悪影響を及ぼす(24日付カナルルラルなど(8)(9)(10)(11)(12)参照)。
食品価格を含むインフレ対策は連邦政府の頭痛の種で、22日付アジェンシア・ブラジル(13)にあるように、収量増との予測を聞いたハダジ財相が食品価格低下に期待する発言を行ったこともあった。だが、昨年の穀物収量が干ばつなどで前年割れとなったように、農産物の量や価格の動きには不安定要素が多く、物価や貿易にも悪影響を及ぼす可能性がある。また、悪天候や災害で悩む農家をつなぎとめる意味での保険や補助などの政策も急がれている。