サンパウロ州=小型機事故続発で検査強化=全国では年初38日間に21件も

【既報関連】航空事故調査・防止センター(Cenipa)によれば、ブラジル国内では年初の38日間で21件の航空機事故が起き、うち6件で10人が死亡した(1)(2)。中でも最多の8件が発生したサンパウロ州では、7日の民間航空機墜落事故(3)や10日のソロカバ空港胴体着陸事故(4)を受け、サンパウロ州地方工学農学評議会(CREA‐SP)が10日、航空機の整備や航空機用部品やコンポーネントの製造などを担当する企業の検査を行うタスクフォースを立ち上げたと同日付アジェンシア・ブラジル(5)が報じた。
CREAは、「同作戦は、航空機整備サービスを提供する企業の正規性を検証し、各社に関係する技術スタッフやサービス提供者、専門家を分析することを目的としており、この分野のセキュリティ強化に役立つはず」との声明を出しており、助言的かつ予防的な性質の検査活動570件を行う。
検査活動強化の直接的な要因は、7日に起き、死者2人、負傷者7人を出した、ビーチクラフト社製双発機「キング・エアF90」の墜落事故だ。
リオ・グランデ・ド・スル州の弁護士が昨年末に購入した双発機は、サンパウロ市北部カンポ・デ・マルテ空港内の会社が整備した後、リオ・グランデ・ド・スル州ポルト・アレグレに向かったが、離陸に手間取った上、離陸直後の7時16分に管制との連絡が絶え、7時20分頃に強制着陸を試みたバラ・フンダ地区の大通りに墜落、大破。燃料満載だったため、前方にいて機体の破片に直撃されたバスも含めて大炎上した。
事故機にはブラックボックスがなく、Cenipaや市警、軍警は目撃証言などから事故原因を探っているが、当日も既に、操縦士が離陸直後に即刻帰還を要請したが交信が途絶えたこと、エンジンの一つに異常が生じた可能性があること、着陸用の車輪が出ていなかったこと、翼が木などにぶつかったこと、燃料が路上に漏れた後に爆発が起きたことなどが報じられていた。(6)(7)
また、その後の報道では、事故の1週間前にエンジンの修理を受けていたことや、輸入時の検査で空気のデータ解析用のコンピューターとフロント・ガラス、除霜システムに不具合があると指摘されていたこと、離陸許可が出た後、ブレーキをかけてエンジンを起動したが、約15秒経っても離陸せず、奇妙に感じたと後続機の操縦士が証言していることなどが報じられた。(8)(9)(10)(11)
だが、最も気になるのは、事故機を1週間預かって修理や整備を行い、離陸直前に機を引き渡したマルテ・アップデーツ社は「飛べる状態だった」と言っているのに、写真解析ではエンジンの一つが止まっていたと指摘されたことだ。同社は22年3月にサンパウロ州内陸部で起き、負傷者2人が出た小型機の事故、24年6月にマット・グロッソ州内陸部で起きて同社の技術者も死亡した小型機の事故などでも責任を問われている。同社はエアタクシーサービスも提供している。(12)(13)(14)
なお、10日はソロカバでの事故以外にも、バイア州南部で小型機墜落で死傷者が2人出る事故発生(15)など、近年は航空機の事故や死者が増加傾向にある(16)。今年も7日までに10人が死亡しており、民間の小型機の安全性を問う声が高まっていた。