トランプ関税=中国製品輸入増を促進か=国内産業圧迫の悪影響も

トランプ米大統領が仕掛ける関税政策により、中国が米国への依存度を減らし、ブラジルとの貿易関係を強化する動きが予想される。専門家らは、ブラジル市場への中国製品の流入が進むことで、短期的には消費者価格引き下げやインフレ抑制が期待できるが、ブラジル産業も競争力を保つために価格を下げる必要に迫られ、国内産業が不利益を被る恐れがあると警告。特に、機械・設備産業、繊維産業、及び自動車産業において影響が顕著に現れると見られ、長期的には失業増加や投資減少、産業衰退が懸念されると、22日付G1(1)が報じた。
米国は1月、自国産業の保護のため、中国製品に対して10%の追加関税を課すと発表。これに対し、中国も米国製品に対する報復関税を実施した。トランプ大統領は中国との新たな貿易協定締結を示唆しており、交渉の行方が注目を集めている。
アグリビジネス研究機関「インスペル・アグロ・グローバルセンター」のマルコス・ジャンキ教授によると、中国はすでに米国との第二の貿易戦争に備えており、世界貿易をより戦略的で慎重、かつ選択的な視点で見ているとし、「中国は輸出の多様化を進め、特に発展途上国との関係強化に注力している」と説明。
この動きが進展すれば、中国製品の世界市場でのシェアは大幅に増加し、ブラジルの経済と産業は対応を迫られると指摘した。24年のブラジルの輸入において、中国製品はすでに24・2%を占めている。
ブラジルへの中国製品流入により、国内産業は価格の引き下げを余儀なくされ、収益が圧迫されると予想されている。関係者らは、この動向に警戒を強めており、国内産業の競争力を保つには明確で安定した競争ルールが必要だと強調。機械・設備産業の売上は、24年に8%以上減少した一方、中国製品の輸入量は10%増加した。
同様に、繊維産業や自動車産業でも価格競争が激化し、国内企業は利益率低下に直面している。国内企業はオンラインプラットフォームを通じて輸入される安価な中国製品に対する競争を強いられており、生き残りをかけた価格引き下げを続ける必要がある。
加えて、米国の関税措置がドル高を引き起こし、ブラジル経済に直接影響を及ぼす可能性も懸念されている。関税が原材料の輸入コストを押し上げ、金利を高騰させることにより、自動車産業など、消費者クレジットに依存する業界に悪影響を及ぼす可能性がある。米国の関税政策がインフレを加速させ、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利を引き上げる事態となれば、ドル高がブラジルのインフレを圧迫し、ブラジル中銀も金利引き締めを強化せざるを得なくなる。
実際、自動車販売における融資を利用した販売比率は23年に30%まで落ちたが、昨年は全体の45%で終わった。全国自動車工業会(Anfavea)のマルシオ・デ・リマ・レイテ会長は、金利や融資コストの影響が業界にとって大きな課題であるとした上で、商業契約の不確実性も懸念材料だと指摘。今後の進展が不透明であることから、業界の成長に向けた見通しが難しくなっていると警告している。
専門家らは、中国製品の増加が長期的にブラジルのマクロ経済に悪影響を与える可能性も指摘。安価な中国製品の流入は、産業の衰退を引き起こし、多くの企業が解雇を余儀なくされるようになる。風力発電機製造業などでは、多くの国内企業が競争に敗れ、業界縮小が進んでいる。産業界は競争力を高めるために戦略的なアジェンダを作成する必要があるとし、国際市場での競争力強化の対策が急務だと強調している。
米国の政策を受け、ブラジル市場には引き続き不確実性が残ると予測されているが、レイテ氏は、ブラジルにとっても新たなチャンスがあることも強調。「主要国との関係を強化し、輸出競争力を高めることができる」と述べ、変化を冷静に受け入れる重要性を指摘した。