リオ山間部に砂防ダム=日本の技術で防災対策

【既報関連】リオ州では4~7日の大雨でアングラ・ドス・レイスとペトロポリスが非常事態を宣言し、国の認定も受けたが、ペトロポリスを含む同州山間部は2011年の集中豪雨でも甚大な被害を受けた。

連邦政府は11年の大水害後、自然災害に対する対策強化を宣言。防災用サイレン設置なども進んだが、ルーラ大統領の日本訪問に合わせて、リオ州山間部の砂防ダム建設の話がより具体的になったと4日付政府公式サイトなど(1)(2)(3)(4)(5)が報じた。
砂防ダム(砂防堰堤)は土砂災害を防ぐために河川に設置され、土砂を貯留したり、既に堆積した土砂流出を防いで土砂の流れを調節したりすることで、川岸や川底が削られるのを防ぎ、下流の住宅や田畑、人命を守る役割を担っている。
日本の技術は世界的にも知られ、「砂防」は国際語になっている。ブラジルでは、気候変動の影響で水害が甚大化する中、脆弱なコミュニティの保護を強化するための戦略として、地域統合開発省(MIDR)や国家防災保護局(Sedec)を軸に取組が進んでいる。
今回、発表された砂防ダムは、大統領と共に日本を訪問した地域統合開発相やSedec局長の立ち合いの下でリオ州山間部のテレゾポリスとノヴァ・フリブルゴ両市が署名した合意文書に基づくものだ。両市の砂防ダムはラ米初の同種の構造物となる。
ノヴァ・フリブルゴの砂防ダムのエンジニアリングプロジェクトは連邦貯蓄銀行(Caixa)が分析中で、25年12月までに建設が始まる予定。テレゾポリスのプロジェクトは既に完了しているが、アクセス道路とメンテナンスへの取組は開発中だ。同市での工事は26年前半に開始予定。
Sedecはダム建設に合わせた技術移転のため、リオ連邦大学(UFRJ)と分散実行条項(TED)も締結。これで、砂防プロジェクトの準備と工事に日本の方法論を適用できるようになった。

砂防プロジェクトは、ブルメナウ(サンタカタリーナ州)やカラグアタトゥーバ、サンセバスチャン(サンパウロ州)、ぺロトポリス(リオ州)でも調査と導入の準備が予定されている。これらの地域は地滑りや土石流に関連した課題があり、日本の技術の恩恵を受ける可能性がある。
ノヴァ・フリブルゴの砂防ダム建設の初期費用見積額は2500万レだ。同プロジェクトは、連邦政府と金融機関からの資金協力と日本との技術協力によって進められる。
砂防プロジェクト拡大はブラジルの気候変動問題への取組に沿うもので、不平等を減らし、極端な事象に最もさらされるコニュニティを保護するためのインフラの重要性を強調するものだ。同プロジェクトは11月に開かれる第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)でも気候変動の影響緩和のための持続可能な解決策の一つとして提示される。これにより、異常気象の影響軽減への適応インフラと技術への投資の必要性も高まる見込みだ。砂防ダム導入で土石流関連災害への地域社会の耐性が高まれば、気候ガバナンス(気候変動に対処するための政策、制度、国際的な枠組み)も強化される。