米関税強化=100%副次関税が直撃か=農業界で再び動揺拡大

トランプ米大統領が14日「ロシアがウクライナ侵攻を50日以内に停戦しなければ、ロシアと取引する国々に100%の副次関税(secondary tariffs)を課す」と宣言したことで、ブラジルに再び波紋が広がっている。
この「副次関税」とは、ロシア産品を輸入しない限り関税が課されない通常の関税と異なり、ロシアと貿易する相手国に対しても課される措置だ。農業大国ブラジルは肥料の約30%をロシアから輸入しており、2024年のロシア産肥料輸入額は約41・7億ドルに達し、世界最大の肥料輸入国としてのブラジルの地位が浮き彫りになっている。
15日付AGWEBサイト(1)によれば、同発言に関連して「南アメリカでは農業大国ブラジルがロシア産肥料の最大購入国である」と明記されており、100%の副次関税の対象国になる可能性が指摘されている。
トランプ発言はまだ「宣言」段階であり、法的措置として実施されるには今後の法制化プロセスを要する。だが具体的な政策として実施されれば、ブラジルの肥料輸入体制や農業界全体に大きな影響を与える可能性がある。
副次関税の宣言以前から、米国の追加関税はブラジルの主要輸出品に直接影響を及ぼす見通しで、輸出業者は8月1日の発動を前に対応を急いでいる。対象にはコーヒーや牛肉、石油、航空機などの戦略的な品目が含まれ、今後の輸出減が懸念されている。
有機ハチミツや水産物などを取り扱う一部の輸出企業は既に、関税措置の影響を受け始めている。国際通商コンサルタントのウェルベル・バラル氏は、「輸送期間を考慮すれば、多くの貨物が発動前に出荷されているため、影響の本格化は8月以降になる」と指摘。一部の企業は契約済みの出荷分に対しても、関税が遡及適用される可能性を懸念しており、法的措置の検討も始めている。(2)
ブラジル政府は関税措置への対応を急いでいる。13日夜、ルーラ大統領は閣僚や中銀総裁らと緊急会議を開き、経済界の代表も含めた対策委員会の設置を決め、関税の影響緩和と危機対応策の検討を進めている。政府は、相互主義に基づく報復関税発動も視野に入れており、「国全体の課題」として超党派の対応を呼びかけている。
トランプ政権は同様の関税をメキシコや欧州連合(EU)にも課すと発表しており、EUは交渉による打開を模索中だ。トランプ氏が相次いで打ち出す通商政策の強硬化により、各国の外交関係や多国間協議にも緊張が走っており、貿易体制の不安定化が懸念されている。
市場関係者は今回の関税政策が米国のインフレを一段と押し上げる可能性も懸念し、その結果として連邦準備制度(FRB)が利上げを長期間続けるとの見通しを示しているが、これに伴ってドル高が進めば、世界の金融市場に広範な影響を及ぼすことも予想されている。
ただ、トランプ政権は過去にも関税措置を示唆した後に撤回や延期を繰り返しており、市場は今回も最終的に緩和される可能性を残している。(3)