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アジア以外で唯一の採掘規模=レアアースのミナスー市

2025年7月29日

ミナスー市でのレアアース採掘の様子(Foto: Divulgação/Serra Verde)
ミナスー市でのレアアース採掘の様子(Foto: Divulgação/Serra Verde)

 かつてアスベスト採掘で知られたゴイアス州ミナスー市は今、レアアース(希土類元素)の戦略的供給拠点として注目を集めている。鉱山会社セラ・ヴェルデは24年1月に商業生産を開始し、ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムの4種の磁性レアアースをアジア以外で唯一、大規模供給している。米中の貿易摩擦激化のなか、これら重要鉱物資源を巡る地政学的緊張も高まっており、ブラジルの供給能力は国際交渉における影響力の一端を担っていると26日付G1(1)が報じた。

 ミナスー市北部の鉱床はイオン吸着型粘土に含まれる磁性レアアースが知られ、これらは電気自動車や風力タービン、高性能スピーカーやハードディスクなど先端機器に欠かせない永久磁石の材料だ。小型軽量かつ高出力でエネルギー効率向上に寄与し、温室効果ガス排出削減にもつながる。再生可能エネルギーや電動輸送、スマートグリッド(通信技術で電力を賢く管理する仕組み)といった脱炭素技術の中核資源だ。採掘では爆破や破砕、有害薬品を使わず、水は再利用する。再生可能エネルギーやバイオ燃料を活用するため、二酸化炭素排出も抑制する。

 セラ・ヴェルデは国立経済社会開発銀行(BNDES)や研究金融機関(Finep)の戦略鉱物支援プログラムにも選ばれ、2030年までに生産倍増を目指す第二段階計画を検討している。

 ミナスー市のカルロス・レレイア市長は同社の約30億レアル(約780億円)投資による波及効果を評価し、「アスベストに代わる新たな柱が立ち上がりつつある」と述べ、27〜28年の生産ピーク時には市・州・国に多くの財源をもたらすとの期待を示す。

 同市は60年代からアスベスト採掘が中心だったが、17年の最高裁判決で使用と採掘が段階的に禁止され、24年には州議会が5年の閉鎖猶予措置を定めた。一方、世界的なレアアース需要の高まりを背景に、同市は新たな鉱業拠点へと移行を遂げた。

 米国地質調査所(USGS)によれば、ブラジルは中国に次ぐ世界第2位のレアアース埋蔵量を有するが、国内には精製インフラが整っておらず、採取された鉱物は国外で処理されている。同社も処理能力を持つ外国企業との取引が中心だという。

 鉱物資源は国際政治の重要争点でもある。とりわけトランプ米大統領は、重要鉱物の供給確保を国家戦略の最優先事項に位置づけ、25年3月には生産拡大を命じる大統領令を発出。米国がレアアースの大半を中国から輸入している現状に強い危機感を抱き、軍事や先端技術における競争力の維持を狙った措置だ。先週の米国臨時大使のブラジル資源への関心表明に対し、ルーラ大統領は「資源は国民のもの」と強く反発し、交渉は国家主導であるべきだと強調した。

 米国はウクライナ支援の交渉で鉱物資源開発を条件にするなど、レアアースを外交材料に活用しており、資源を巡る地政学的駆け引きは激化するとみられる。(2)

 こうした世界的な鉱物資源争奪戦の中で、ブラジルは特に重要な役割を担う。世界の既知レアアース埋蔵量の約23%を有し、ニオブでは世界シェア約92%を占める一方で、国内生産は限定的だ。その多くの鉱床は環境保護が求められるアマゾン地域にあり、開発と保全の両立が課題だ。


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