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ショーロ=黒人のグルーブ感に日本人の繊細さ=パンデイロ奏者の鵜澤桜さん

2025年8月1日

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 ショーロのパンデイロ奏者の鵜澤桜さん(東京在住)と、彼女に太鼓判を捺すブラジル音楽評論家の坂尾英矩さん(94歳、神奈川県横浜市出身)が22日に編集部を訪れ、3カ月間の滞泊の成果を報告した。ショーロは、ブラジルで19世紀後半に生まれた楽器演奏中心の独自音楽。欧州の舞曲(ポルカやワルツなど)とアフリカ系のリズムが融合した音楽と言われ、即興性と高い演奏技術が求められる。

 桜さんは2年前にリオのニテロイでロジェリオ・ソウザとの共同プロデュースによりロナウド・ド・バンドリンやチアゴ・ソウザ、エドアルド・ネベスらと録音した曲を、昨年末に日本で自己プロデュースCD『O Pandeiro e a Flor』としてリリース。今回はCD発売を記念してリオでショーをするためにやってきた。

 今回はリオでCDメンバーを中心としたショーを4回、他にも、あちこちでローダ・デ・ショーロ(輪になって演奏して聴衆が周りで聴くスタイル)やカンジャ(セッション)に参加したという。セルタネージャやファンキが全盛の現在のブラジルにおいて、発祥の地リオでもショーロ演奏で食べていくのは難しい現実があるそうだ。にも関わらず、桜さんは日本からわざわざ来て、並のブラジル人以上の演奏を見せて、日本でCDまで出した。

 桜さんは「あの大御所のロナウドが自宅で歓迎シュラスコをやってくれた時、あのCDをBGMとしてかけて、弁護士の娘さんはボロボロ泣きながら『こんなにすばらしいCDを作ってくれてありがとう。私たちは子どもの頃からジャコーを聴いて育ってきた。そんな子ども、ここブラジルにだってなかなかいないよ? いつでも戻ってきなさい』と言ってくれたのが本当に嬉しかった」と笑顔を浮かべた。「ジャコー(Jacó)」はショーロ界を代表する名人の一人、ジャコー・ド・バンドリンの愛称。

 さらに「演奏を聴いて『黒人が叩いているようなグルーブ感に、日本人的な繊細さが宿っている』と論評してくれる人もいて、何よりの褒め言葉に本当に来たかいがあった。できれば今後、年1回ぐらいブラジルに来て、私が心から大好きなミュージシャンたちと一緒に素晴らしい音楽を作りあげたい」と報告した。

 坂尾さんは「かつてリオ在住の日本文化愛好家でもあるブラジル人音楽評論家が『ショーロの繊細さを理解できるのは日本人しかない』と言っていたのを思い出す。まさにその言葉を体現する人物が出てきた。パンデイロを叩く人は多いが、ブラジル人の魂に響くような叩き方ができる日本人は滅多にいない」と論評した。

 桜さんは4月30日に来伯し、丸3カ月滞在して7月23日の便で帰国した。公式サイト(www.sakuradopandeiro.com


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