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BRICS拡大に苛立つ米国=制裁強化が結束促進の皮肉

2025年8月7日

7月にリオ市で開催されたBRICS首脳会議に参加した加盟国代表者ら(Foto: Ricardo Stuckert / PR)
7月にリオ市で開催されたBRICS首脳会議に参加した加盟国代表者ら(Foto: Ricardo Stuckert / PR)

 国際秩序が激変する中、トランプ米大統領は、新興経済国グループBRICSを「反米的な国々の集団」と位置づけ、加盟国に対して強硬な経済制裁を講じる意向を示している。BRICSは、米国の伝統的な覇権体制に対抗し、多極的な世界秩序の推進とドル基軸体制からの脱却を志向しており、各国通貨による貿易決済の議論が進行している。トランプ氏はこうした動きを国家安全保障上の重大な脅威と見なし、覇権維持を賭けた戦略的対応を模索し続けていると6日付のBBCブラジル(1)が報じた。

 今年1月、トランプ氏はインドからの輸入品に25%の関税を課すと発表した際、その理由の一つに同国のBRICS加盟を挙げ、「BRICSは基本的に反米の国々の集団だ」と述べた。加盟国への追加制裁の意向も示唆したが、具体的な内容は明かしていない。こうした姿勢は、ブラジルが議長国となってリオ市で7月に開催されたBRICS首脳会議後に一層明確になった。同会議では、加盟各国が米国の関税政策を批判し、国際通貨基金(IMF)の改革やドル以外の通貨価値の向上を求める提案がなされた。

 ブラジルには6日から50%関税が発効した。トランプ氏はボルソナロ前大統領が国家転覆未遂の疑いで最高裁の訴訟対象となっている件を「不当な扱い」とし、これを関税措置の根拠に挙げた。直接的にBRICSを理由とはしていないものの、7月初旬には「BRICSの反米政策に加担する国には追加で10%の関税を課す」と明言していた。

 BRICSは現在、ブラジル、ロシア、中国、インド、イラン、エチオピア、インドネシア、南アフリカ、アラブ首長国連邦、エジプトの10カ国で構成され、世界人口の約半数と世界経済の約4割を占める。覇権維持を目指すトランプ政権にとって、BRICSは政治的かつ経済的な挑戦の象徴とされ、その影響力の拡大に対して強い警戒と苛立ちを募らせている。専門家はBRICSを反西側色の強いブロックと位置づけ、その多極的秩序の追求は戦後の米国主導体制に対する明確な挑戦と分析している。

 特に、BRICSが求める国際金融機関改革や新興国の代表性向上は、米国が国際金融システムで保持する拒否権や影響力の縮小につながりかねない。ドル依存からの脱却を図る動きについても、トランプ政権は「ドルへの攻撃」とみなし、強く反発している。

 ロシアが国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除されたことを契機に、BRICSは独自のデジタル決済システムの構築を進めており、中国の人民元の使用拡大も顕著だ。ルーラ大統領は7月の首脳会議で「北半球の支配に従属するのはもうたくさんだ」と述べ、ドルを介さない貿易の推進に意欲を示した。

 トランプ氏の関税引き上げ措置はBRICS全加盟国に対して実施されているが、中でもブラジルに対する50%という税率は最高水準であり、政治的背景を明確に理由としている点で異例だ。これらの措置は単なる経済政策にとどまらず、地政学的圧力の手段として機能しているとの指摘もある。

 こうした米国の強硬姿勢は、短期的にはBRICS内に分断をもたらす可能性があるものの、長期的には加盟国の結束を強化し、世界の多極化を加速させるリスクもはらんでいる。専門家は、トランプ氏の政策がかえってBRICSの団結と拡大を促進しかねず、米国の相対的な地位低下を加速させる可能性があると見ている。


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