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USP=日本のキリシタン文学を講義=大阪大学の岸本恵実教授

2025年8月15日

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 大阪大学大学院人文学研究科の岸本恵実教授(52歳、大阪府出身)が、国際交流基金の助成を受けてサンパウロ大学(USP)へ講師派遣され、8月7日から9月15日まで授業を行なっている。16世紀に日本に宣教に来ていたイエズス会神父などが残したキリシタン文学が研究分野で、彼らが作った日ポ辞書や文法書などの研究成果などを講義するという。

 岸本さんは来伯4回目。1度目は2004年にUSPで開催された宣教言語学会、2度目はリオ州立大学で開催された言語学学会で、3度目は2018年にリオで『日葡辞書』が発見された時だったという。今回は9月にマナウスのアマゾナス連邦大学で行われる日本研究学会でも発表する予定。

 外国人宣教師が日本語の話しことばを学べるようにと日本語をローマ字の活字を使って印刷している、1593年に天草で印刷されたイソップ物語についても講義するという。「日本語は話し言葉と書き言葉が厳密に区別されていたので、話し言葉が書かれて残っているのはとても珍しく貴重。外国人宣教師は日本人に布教するために日本語の話言葉を使えるようになる必要があったので、それを勉強するために、敢えて話し言葉で書かれた教科書です」と解説した。

 『リオ・デ・ジャネイロ国立図書館蔵日葡辞書』(エリザ・タシロ/白井純編、2020年、八木書店、https://catalogue.books-yagi.co.jp/books/view/2211)についての講義もある。2018年にリオで初めて発見された日本のキリシタン版辞書で、400年前の日本・ポルトガルの言語を知る最重要資料だと言われる。

 岸本さんはその本に寄せた解説論文の中で、「長崎で印刷された『日葡辞書』の内容がポルトガルで作られたポルトガル語・ラテン語辞書にも入ったこと、つまり日本で作られた『日葡辞書』はポルトガル本国の辞書にも直接影響を与えた」ということを書いた論文だという。

 そのほか、『フランス学士院本羅葡日対訳辞書』(岸本恵実解説・三橋健書誌解題、2017年、清文堂出版)についても講義するという。これは、1595年に天草で印刷されたラテン語・ポルトガル語・日本語の対訳辞書の現存する本のうち、パリのフランス学士院図書館にある本の複製と解説だ。

 日本でイエズス会が作った学校において、日本人が神父を目指して勉強する際に必要になるラテン語学習のために作られた教科書だという。神父になるためにはラテン語が必須だったが、当時、日本のイエズス会のなかではポルトガル語が共通語として使われていたという。

 岸本さんは「中村長八神父に関してもいつか調べたいと思っています」との期待を述べた。ドミンゴス中村長八神父は長崎県五島列島出身で、隠れキリシタンの末裔として生まれ、日本初の海外布教師として1923年に渡伯した。日伯司牧協会では2002年から福者に列するための運動を始めている。

 一緒に編集部を訪れた菊池渡USP教授によれば、同大学院にはラテンアメリカ唯一の日本文化研究コースが存在しており、そこで今回の講義が行われている。「ブラジルでは学部レベルでは日本語コースは7大学ありますが、大学院レベルはここだけ。来年このコースは30周年を迎えます。修士号を取るために外国からも学生が来ます」という。

 岸本さんは大学院生向けだけでなく、学部生や一般人が聴講可能な授業も行う予定。


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