日系ブラジル人派遣大手に聞く業界事情=深刻な労働力不足の日本=高まる日系ブラジル人求める声

物流業をはじめ、介護、リノベーション、人材派遣業など幅広い事業活動を展開する三協グループ。その中核企業で今年創業60周年を迎えるサンキョウテクノスタッフ社(本社:愛知県豊橋市)は、40年以上にわたって日系ブラジル人の派遣事業や生活支援を行い、業界内で定評を築いてきた。同社の稼働スタッフは現在約3千人を超し、その内の6割が日系ブラジル人だという。同社の奥冨祐二営業推進部長、高橋克典豊橋・浜松営業所所長が事業視察のため9月24日に来聖。同行の同社ブラジル駐在員西村清氏を加えた3氏から日系ブラジル人を取り巻く昨今の業界事情を聞いた。
日本は現在、深刻な労働力不足問題を抱えている。その中で実質的に労働力確保を目的に利用されていた外国人技能実習生制度が2030年までに廃止され、今後は外国人労働者の権利をより保護した育成就労制度へ移行する。労働力不足問題の解決を外国人労働者に頼る施策の是非は政治的論点ともなっており、昨今の政治情勢から今後は外国人労働者の規制はより進む見込みだ。労働力の確保はより切迫した問題となることが予想されるが、埼玉県川口市でのクルド人問題に代表されるように外国人労働者にまつわる移住問題は、日本の社会に様々な懸念を呼び起こしている。
こうした国内事情の中、日系ブラジル人人材を求める声は増していると奥冨部長は語る。奥冨部長によれば、企業の繁閑対応として活用される労働者派遣において、日本人の定着性や勤務成績は企業の求める水準に達することが少なく、またアジア諸国の外国人労働者においては在留資格の制限によって企業が望む活動が十分に行えない場合が多い。日系ブラジル人は定着性、勤務成績が良く、在留資格による制約もないため、現在の人材需要とマッチしているという。
奥冨部長(埼玉出身、51歳)はかつて、埼玉県川越市の工場で日系ブラジル人120人と共に働き、時には家族ぐるみの関係を築きながら日系ブラジル人に対する理解を深めた。「日系ブラジル人の皆さんは明るく真面目な方が多い。彼らが生活に幸せをしっかりと感じられるようにするまでが私たちの役目だと思っています」と語る。
約20年前、日本で働く日系ブラジル人の多くはブラジル帰国を前提に「お金を稼ぐこと」を重視したが、近年は日本での定住志向者が増え、生活の安定や、本人の資質に会う仕事を求めることが増えた。奥冨部長は「すでに日本で育った日系ブラジル人子弟が日本の社会で活躍する時代になっています。日系ブラジル人の歴史こそが日本人の外国人労働者に対する不安を解消し、外国人移住問題解決の糸口となるのではないかと思います」と述べ、同社が地域行政との橋渡し役や、地域社会との共存に向けた交流事業を積極的に行う理由とした。
そうした中でサンキョウテクノスタッフ社が現在最も力を入れているのが、日系4世受け入れ態勢の強化だ。現行制度では所定の条件を満たした18~35歳までの日系4世を対象に最長5年間の滞在が可能なビザが交付される。同社ではビザ交付条件となる日本語能力の習得支援を行い、さらには実質的な日本での保護責任者となる「日系四世受入れサポーター」のなり手にもなるという。現在、奥冨部長自身も日系四世受入れサポーターとなっており、同社代表取締役社長の三原昇氏もサポーターになると表明している。
奥冨部長は「日本はこれからますます日系人の皆さんの力を必要とするでしょう。弊社では長年培ってきたノウハウを活かし、今後総力をあげて4世の皆さんの支援を行っていく所存です」と述べた。
日本就労に関する問い合わせ等はサンキョウテクノスタッフ社サイト(https://sankyo-br.com/)から行うことが出来る。