マイゾウ・メーノス(まあーまあー)の世界ブラジル(38)=サンパウロ 梅津久
第30話―ビザが取れない
日本とブラジルの友好関係は1995年に日伯修好100年を迎え、政治・経済・文化に於いて非常に友好な関係を保っているのにも関わらず、ブラジルの日本人に対するビザ(査証)の発給には非常に難しい問題が残されている。
こんな出来事もあった。サンパウロのグアリューリョス空港で日本からの訪問者の到着を待っていたがいつまでたっても出てこない。そのうち電話が入り「実はブラジルのビザを取得していなかったので入国できない!!」と悲しい声での連絡であった。
その時、私の頭に浮かんだのは、急のブラジル訪問でブラジルビザなしで日本を出発して、アルゼンチンに行き(アルゼンチンにはビザなしで入国できる)、4~5日滞在しているうちにアルゼンチンでブラジルのビザを取得した(日本では早くても数日かかる)という話だった。
「わかりました、それではそのまま空港内の空港会社のカウンターに行って、アルゼンチン行きの航空券を購入して、アルゼンチンに飛んでください。アルゼンチンで旅行代理店を通してブラジル入国ビザを取得して、サンパウロに来てください」と指示して空港を後にした。
案の定、彼は3日後にはサンパウロに着き無事入国できた。次のビザトラブルは、日本の私の甥とその妻が、サンパウロで私の長女の結婚式に出席するために、日付を決め航空券も購入していてのだが、出発の数日前にブラジルでは入国ビザが必要だと分かったが、予約済みの出発日には間に合わず、結婚式への出席は諦め、一か月遅れのブラジル訪問となった。
ブラジルビザの種類には各種ありますが、観光査証(VITUR)、商用査証(ビジネスビザV2)、一時滞在査証(テンポラリーV5、技術援助、就労ビザ、駐在ビザ)、長期滞在査証(パーマネントVIPER、赴任ビザ)などは皆さんの身の回りで使用されるビザです。
観光ビザの滞在期間は入国時から90日で、1回のみ延長可能で180日滞在可能、但し商用、勉学、就労に従事することはできない。これに関しては、日本人以外の外国人で、観光ビザで入国して会社で働いていたとして摘発、強制送還され、その後この会社は入国管理局の厳重監視指定企業となった。
就労ビザの取得にはそれなりの時間と手間がいるので、業務の内容によってより簡単な観光ビザで入国することがあるが、要注意である。自分の会社や訪問先の制服を着用しない、現場に入らない、現場に入っても作業に手を出さない、あくまで観光・見学目的であるようにすることが重要であり、内部告発に注意です。
※観光ビザに関しては、2019年に査証なしで入国できるようになった。その後二国間協定の不備で一時査証が必要になったが、2023年10月から再び査証なしでの入国が可能となっている。
商用ビザV2の滞在期間は入国日から90日、1回のみ延長可能で180日滞在可能。マルチビザと呼ばれ、有効期限の3年間、180日を超えない範囲で何回でも入国できる。但し報酬を得ることはできない。滞在期間は最初の入国日から12か月間に180日を超えてはならない。
一時滞在(技術援助)ビザV5は、技術援助を目的として働くことができ、役務金の海外送金が可能である。滞在期間は90日で延長はできない。
一時滞在(就労)ビザV5は、一時労働、技術支援を目的で働くことがで、役務金の海外送金ができる。滞在期間は入国日から180日で、特別な理由により延長1年に延長でき、180日を超えない範囲で何回でも入国できる。
一時滞在(駐在)ビザV5は、滞在期間は2年間で駐在員を目的としてブラジルの身分証明書、個人納税番号、労働手帳を取得して、国内の法規に従った就労が認められる。1回の更新(さらに2年)でき4年間の滞在が可能である。さらにこの有効期限の間に所定の手続きを行って、長期滞在(赴任、パーマネント)ビザVIPERの取得もできる。
長期滞在(赴任、パーマネント)ビザVIPERは、ブラジル企業と雇用契約を結び経営者、または役員として赴任し、長期滞在が必要な場合に取得できる。駐在ビザと同様にブラジルの身分証明書、個人納税番号、労働手帳を取得して、国内の法規に従った就労が認められる。
ビザの管理で注意すること
1.一時滞在ビザ、永住ビザはブラジル法務省の許可が出てから180日以内に日本のブラジル領事館にビザ取得申請を行わないと無効となる。(許可は連邦の官報に発表される)
2.ビザ発給日から90日にブラジルに入国しなければビザは無効となる。
3.滞在期間はブラジルに初めて入国した日付から算出され、有効期限内は何度でも出入国できるが、出国日がビザの有効期限を過ぎてはならない。
4.出国日がビザの有効期限を超えることが予測される時は、事前に滞在延長の申請をすること。
5.入国時にイミグレーションで押される印鑑の右下に滞在可能日数が手書きで記載されるので確認が必要。空白の場合はビザの有効期限となる。再入国時には特に注意が必要となる。
6.滞在期間を確認する場合、早朝、深夜に出入国する場合も時に注意が必要です。1日違いで滞在期間を過ぎ、出国時のイミグレーションで時間がかかり、違約金を取られたケースもある。
7.一時滞在ビザ、長期滞在ビザで初めて入国した場合は、最寄りの連邦警察に30日以内に出頭し、外国人登録をおこなって、テンポラリーの身分証明書を申請しなければならない。
8.一時滞在ビザは有効期限が過ぎてから、90日以内は再申請できない。
9.長期滞在ビザ(パーマネントビザ)の場合でも、有効期限に関係なく、連続して2年以上国外にいるとビザの効力を失い再入国できなくなるので、長期ビザを継続するなら一旦出国した場合には2年以内に再入国しなければならない。
いずれにしろブラジルのビザの発給はなかなか進まず非常に時間がかかる。一時滞在ビザ、長期滞在ビザに限っては、申請に必要な書類の取得と作成で時間も労力もかかり大変な仕事となり、法務省の認可が出るまで申請後1~3か月はかかると考えて早めに準備と申請をしなければならない。
長期滞在ビザに関してはさらに期間がかかり、認可されるまで数か月かかる場合がある。実際に駐在ビザで入国し、赴任ビザを申請したが、駐在ビザの有効期限が切れるまで認可されず、ブラジルを出国しなければならないケースも発生している。
また、観光ビザで入国した人も、過去一年に180日以上滞在の記録があると、最終出国日より6ヶ月間はビザの取得が出来ない、観光で半年以上も続けて滞在する必要がないということである。
これらは、いずれもブラジル国内の失業率が毎年上昇しており、国内労働者の雇用問題に絡み、国内労働者の保護を訴える労働組合の政治的圧力がかかっているためか、政府の外国人労働者の労働認可を制限する措置で、非熟練外国人労働者の入国・就労を制限することで、国内のブラジル人労務者の雇用を促進することを目的としているためだ。法務省の認可前の雇用、労働省からの認可が遅れるのは、ブラジルの事務処理の遅さがさらに輪をかけている。
ここも”マイゾウ・メーノス”の世界ブラジルである。

