「私が見た日本」講演会=ラジオ司会者と通訳が語る=「文化に優劣なし、違いだけ」
「日本は、都会だけでは語りきれない」。そんな視点から始まった講演会「O Japão que eu vi(私が見た日本)」が18日夜、サンパウロ市のジャパン・ハウスで開かれた。日本国総領事館の招待で能登半島や金沢、東京やラジオ局などを視察旅行をしてきた有名ラジオパーソナリティのマユミ・サムさんと、幼少期を静岡県清水市で過ごした通訳・研究者のアナ・リジア・ポゼッチさんが、大都市だけでは語れない、それぞれの「心に刻まれた日本」を語り合った。華やかな観光だけではなく、日常の暮らしや人との対話の中に、静かな魅力が宿っていると語った。
マユミさん(3世)は、日系人が多いモジ・ダス・クルゼス市出身。苗字はスギモト、パウリスタ大通り所在のアルファFM局(FM 101,7 MHz)で活躍する。「日系人の友達は多いが、日本語学校に行ったことがなかった。でも食べる前には『itadakimasu』、食べ終わったら『gotisousama』と自然に日本の習慣が身についており、気がついたら日本文化を普及する側に。ラジオの延長でSNSでも紹介している」と笑う。そのインスタグラムのフォロアーは30万人を超える(www.instagram.com/mayumisam/)。
「日本で公立学校を訪問した時、両親から聞いてきた話が全て合点が言った。だから親はそんなことを自分に言っていたのだと。生徒の女の子に将来なりたい職業を尋ねたら、『数学教師』と答えてきたので驚いた。ブラジルならインフルエンサーとか社長とかでしょ。掃除も生徒が自分でやっていて、公共に尽くす考え方が徹底していると感じた」としみじみ語った。
一方、アナ・リジアさん(@komorebitranslations)は父親がサッカープロ選手だった関係で1993年に訪日して清水で幼少期を過ごし、近所のおばさんたちに可愛がって育ててもらった経験を愛情を持って語った。「地域活動が充実していて、お祭りとか子供会とか思い出がいっぱいある。30年経った今でも付き合いがあり、結婚式にも来てくれた。ブラジル人とは愛情表現が違うだけで、情の深さは一緒」とし「文化に優劣はない。あるのは違いだけ」と強調した。
子供時代の作文に「日本とブラジルが混ざったら良いのに」と書いていた。「だから互いの文化を紹介できる今の職業に就いている」と締め括った。
質疑応答で会場から「日本で学んだこと」を尋ねられたアナ・リジアさんは「自然を見る目。例えば『木漏れ日』という言葉には日本人の感性が象徴されている。木々の間から差し込む日の光に名前を付けるという発想がすごい」と述べた。「日本に観光旅行する際に一番に役に立つ日本語は?」との質問に「すみません」と即答し、「Sumiu mais cem(100以上無くなった)を早く言うと感じが出る」と答えて笑いを誘った。
二人は「日本は、実際に行って感じ取る場所」という共通の感想を述べ、「ぜひ日本を訪れてみて」と呼びかけた。講演はユーチューブでも同時配信された。伝統と現代、地方と都市、記憶と現在。二人が描いた日本は、単なる美しい景色ではなく、そのあいだを静かに行き来する〝心の風景〟だった。








