戸井田さんブラジル初女性7段合格=「聖武館」剣道一家の快挙=11月に名古屋の審査会で
11月8日、日本の名古屋で開催された剣道の7段審査会で、サンパウロ市内在住の戸井田理恵さん(43歳、3世)が一発合格し、ブラジル初の女性7段剣士が誕生し、当地剣道界で大きな話題になっている。戸井田家は祖父の代からの剣道ファミリーで、自宅が剣道場になっており、父、息子3人、今回長女の理恵さんが剣道7段という筋金入りだ。ブラジル初女性7段誕生は、長い日本移民史の中でも快挙と言えそうだ。今回外国からの受審者は戸井田さんとその婚約者・高山毅士さん、善村徹也さんの3人で全員揃って合格。外国から12人が受審したが、合格者はブラジルからのこの3人のみで、当地の水準の高さを立証することにもなった。
11月22日に自宅剣道場「聖武館」で取材した際、父・戸井田九二寿さん(79歳、2世)は「私の父・富寿、私、息子3人、そして長女が皆7段。娘の合格は私の夢でした。彼女は試験の前、本当に真剣に練習に取り組んでいた」と感慨深そうに語った。道場の壁には明治天皇の御真影や富寿さんの写真が飾られていた。
九二寿さんの妻も4段で、家族で計39段という剣道一家だ。長男はカナダで、次男は聖南西イタペチニンガ、三男は三重県伊賀上野で道場を開き、剣道を教えている。
理恵さんは「今でも信じられません。まさか一発で合格するなんて思いませんでした。5歳から剣道をやっていますが、実はもう引退しようかと思っていました。〝最後のひと勝負〟と思って一生懸命に練習した甲斐がありました」と満面の笑みを浮かべた。
剣道を続けてきた理由を尋ねると、「好きだからやってきました。剣道はみんながやっているので、家族そのもの」と答えた。兄弟はみな世界選手権大会の常連で、次兄はブラジル代表監督も務めている。
祖父・富寿さんは福島県の海沿いの町の出身で、1933年11月着のらぷらた丸で渡伯、「父は2、3年働いて日本に帰るつもりで、竹刀と防具だけ持ってブラジルに来たと言っていました」と九二寿さんは笑う。聖武館は1973年に始まり、半世紀以上の歴史の中から数々の指導者が生まれて、南米武道の源流となっている、
現在、同道場に登録した剣士40人中、頻繁に練習に通うのは半分程度。理恵さん曰く「私たち家族以外はほぼブラジル人」とのこと。女性剣士の一人、ニコレ・テレスさん(Nicole Teles、15歳)に理恵さん7段合格の感想を聞くと「めっちゃスゴイ!」と日本語で答え、「私も7段になりたい」と元気よく答えた。「小さい頃は練習が嫌いだったけど、勝ち始めて面白くなった」とのこと。彼女は11月14日に亜国マルデルブルグで開催されたラテンアメリカ大会少年女子の部(15〜16歳)で見事優勝したという。
午前は通常通り練習した後、お昼からは持ち寄り品で賑やかに合格祝賀会が行われた。
理恵さんの婚約者の父・高山直巳さん(71歳、青森県出身)は「ブラジルの剣道は、笠戸丸の甲板で剣道大会が開催されていた記録もあり、日本移民と共にブラジルに渡り、今日まで日本の武道として受け継がれています。その長い歴史の中で女性7段は初めての快挙。7段は日本で2万人いますが女性はわずか500人。しかも一発本番。ちなみにうちの息子の毅士も同じ時に一発合格なので、夫婦で7段一発合格も珍しい」と喜んだ。
婚約者である高山ファミリーも計30段に及ぶ剣道一家で、両家を合計すると70段にもなり、まさにギネスブック並みと言えそうだ。
【合格者リスト】
(www.kendo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/11/20251108_aichi-k7.pdf)








