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ブラジル=米国のベネズエラ空爆に警戒=権力空白なら混乱必死

2025年12月9日

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2023年5月、ルーラ氏はマドゥロ氏を外務省本部に迎え、昼食会を開催した(Foto: Antônio Cruz/Agência Brasil)

【既報関連】米国がベネズエラ領内の標的に対する軍事攻撃の可能性を強める中、ブラジル政府は事態の急迫化を最大の外交課題と位置づけ、空爆阻止と地域不安定化の回避に向けた対応を強めている。ルーラ政権は、ベネズエラのマドゥロ大統領に対する過度な反撃抑制への働きかけや米政府との直接協議を並行させつつ、亡命受け入れや米国との仲介は行っていないと明言する一方、米軍の動員拡大が南米全体に新たな介入の連鎖を誘発しかねないとの危機感を強めている状況だと8日付ヴァロール紙など(1)(2)が報じた。

ブラジル大統領府は、米国が攻撃開始に傾斜する中、ベネズエラ側が過剰に反撃することが米軍の行動拡大につながりかねないとして、強く警戒している。ブラジルはマドゥロ政権に対し、挑発的な言動を避けるよう、大使館ルートを通じて働きかけており、ベネズエラ側が最近、「対話」や「平和」を強調する姿勢に転じた一因になったとの見方もある。

だが、こうした動きは米国による軍事判断を変えるには至っておらず、ブラジル内では2千キロに及ぶ国境を接する隣国が空爆の対象になる可能性が現実味を帯びているとの緊張感が広がる。

米国は数週間前から、航空母艦ジェラルド・フォードを含む大規模艦隊をカリブ海の国際海域に展開。ベネズエラへ向かうとされる船舶への攻撃で80人以上が死亡した。トランプ政権内の強硬派はマドゥロ政権打倒を目的とした直接介入を支持しており、米政府はベネズエラ空域は「閉鎖」と宣言。航空便の停止と米国民への退避勧告も行っている。

一方、ブラジルはマドゥロへ氏の亡命提供を否定し、マドゥロ氏自身も避難や調停への関心を示していないとされる。もし、マドゥロ氏がブラジル領や在カラカスブラジル大使館に保護を求めてきたら、ブラジル政府は申請を検討する意向だが、24年のベネズエラ大統領選が不正であったとする国際的評価を踏まえ、ブラジルはマドゥロ氏の再選を承認せず、ベネズエラのBRICS加盟も拒否してきた。これにより、両国関係は冷却状態にあり、ブラジルが第一の避難先になる可能性は低いと見られている。

ブラジル政府が最も懸念しているのは、米国による空爆が地域の政治・治安に連鎖的な混乱をもたらすことだ。大量のベネズエラ難民が周辺国へ流出する恐れに加え、米国がベネズエラを標的にすれば、コロンビアやメキシコなど、トランプ大統領が麻薬や不法移民問題で批判してきた国々への介入にも道を開く可能性がある。

さらに、仮に米国の圧力でマドゥロ氏が退陣すれば、ベネズエラ政局は混迷を深め、統治可能な指導者が不在のまま、権力の空白が生じると見られる。野党指導者マリア・コリーナ・マチャド氏を含め、政権運営が可能な政治的基盤を持つ人物はいないと認識され、混乱はブラジルにも波及する恐れがある。過去のリビア、シリア、イラク、アフガニスタンでの政権転覆後と同様の混乱が想起されている。

こうした中、ブラジルは米国とベネズエラ間の仲介を行っていないと明言しており、トランプ・マドゥロ両首脳の電話協議や、ブラジル人実業家ジョエズリー・バチスタ氏とマドゥロ氏の接触とも無関係だと述べている。ブラジルは、米国による空爆が始まった場合でも、初撃で終わるよう働きかける一方、域内諸国との連携で緊張緩和を図る構想を模索している。だが、アルゼンチンやパラグアイなどがベネズエラ政権に厳しい姿勢を取る中、南米全体での一致形成は困難とみられている。


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