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COP30=気候危機に対応する日本の技術=ジャパン・パビリオン紹介(3)=循環型社会編

2025年12月19日

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SPACECOOL:暑熱リスクに対応するための新しい冷却ソリューション

気温上昇と熱波が世界的課題となる中、関心を集めていたのが、日本発のクライメイトテック企業 SPACECOOLが開発した放射冷却素材だ。設立5年の企業ながら、太陽光の約95%を反射し、受けた熱を宇宙空間へ逃がす素材を実用化し、3年連続でCOPに参加している。

展示されたのは粘着フィルム、マグネットシート、テント生地との複合素材など多用途に加工できるサンプルで、取締役CSO宝殊山卓志(Takayuki Hoshuyama)氏は「貼付すると表面温度が10〜12度下がる」と説明。来場者はライト照射による温度差をその場で体感し、驚きの声を上げていた。

用途は屋外設備の過熱防止から空調室外機の省エネ、簡易住宅の屋根、家畜の熱ストレス対策まで幅広く、サウジアラビアでは空調エネルギーを最大40%削減した事例も紹介された。

宝殊山氏は「ブラジルのような高温多湿地域では、外気負荷を減らすことで空調効率を大きく改善できる」と述べ、学校・病院・簡易住宅などへの応用可能性にも言及した。

アマゾン地域を含むブラジル都市部では熱波が年々深刻化し、空調依存と電力代が家計を圧迫している。「建物そのものを暑くしない」というアプローチは、新しい選択肢として注目を集めていた。


■循環型社会

気候危機が深まるなか、廃棄物の扱いは温室効果ガス排出や資源消費に直結し、循環型社会の構築は急務となっている。とりわけアマゾンでは、非木材林産物(NTFPs)を活用するバイオエコノミーが、森林保全と地域経済を両立する鍵とされる。COP30ジャパンパビリオン企業紹介の第3弾では、こうした循環型社会を支える日本発技術を取り上げる。

第1弾、第2弾に続き、締めくくりとなる本稿では、ジャパンパビリオン全体の総括として、環境省地球環境局国際脱炭素移行推進・環境インフラ担当参事官室・工藤俊祐氏のコメントを紹介したい。

「開催国ブラジルには、豊かな森林資源を活かした保全と再生可能エネルギーの拡大を両立し、世界の気候変動対策を牽引する役割が期待されます。日本としても、企業の技術力と政策協力を通じ、バイオ燃料、森林保全プロジェクト、衛星活用分野などで協力を深めることで、ブラジルの脱炭素移行と社会課題の解決にともに取り組んでいきます」


平和化学工業:地域の未利用資源を生かす、日本発の循環プラスチック

平和化学工業は、コーヒー抽出残渣や卵殻、カカオハスクなど、これまで廃棄されてきた副産物を高い割合で配合し、プラスチック使用量を大幅に削減する素材を開発している。COP30のブースでは、コーヒー抽出残渣を55%配合したパッケージや、卵殻を54%配合したボトルが展示され、来場者の注目を集めていた。

副産物を高配合しても強度や成形性に問題はなく、素材として十分実用的だという。また、卵殻を使ったボトルは炭酸カルシウムを多く含むため弱アルカリ性を示し、浴室に置いてもカビが生えにくいという特性を持つなど、素材そのものの性質を活かした製品開発も進んでいる。

プラスチックの使用量削減に加え、洗浄リサイクルが難しい化粧品・洗剤ボトルなどでも環境負荷を低く抑えられる点が評価されている。バイオ由来部分は燃焼しても追加排出につながらないカーボンニュートラル素材として扱えることも強みだ。

また、化粧品や洗剤などの中身に植物抽出物が使われる場合、必ず残る「絞りかす」のような固形残渣にも着目しており、それらを容器へ再利用することで、製品全体としての無駄を減らし、廃棄物の発生を抑える設計が可能になるという。展示ブースでは、コーヒーやカカオハスク、コットン、ブドウの皮などを素材に用いたパッケージ例が紹介された。

会場では、参加者からアサイー種子の活用可能性に関する質問やコメントも多く寄せられ、興味を持った人が知人を連れて再訪するほどの反応があったと常務取締役の畠山治昌氏は話す。アサイー種子にカカオポッド、現地の副産物を使った素材開発に広がれば、プラスチック削減だけでなく、産地での雇用や新しいバリューチェーンにもつながる可能性がある。(続く、武田エリアス真由子記者)


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