かつての石油大国の栄華と衰退=米中覇権争いで揺れるベネズエラ
【既報関連】ベネズエラの石油を巡る争いは、エネルギー資源の取り合いにとどまらず、国際的なパワーバランスを揺るがす重大な事態に発展している。トランプ米大統領は、ベネズエラの石油産業は元々、米国企業の手によって築かれ、社会主義政権に奪われたと批判。現在、米国はその利権を取り戻すべく、政治的・軍事的圧力を強めている。かつての石油大国は今、どのような転機を迎え、世界経済にどんな影響を与えるのか。5日付ドイチェ・ヴェレなど(1)(2)(3)が報じた。
ベネズエラの原油埋蔵量は世界有数の3千億バレル超で、サウジアラビアを凌駕する。同国の石油産業は20世紀初頭に進出してきた米国企業によって支えられた。70年代には石油生産量が300万バレル/日に達し、フランス・パリに匹敵する生活水準を誇っていたが、その富はごく一部のエリート層に集中し、貧困層は恩恵を享受できず、経済的な不平等が深刻化した。これが80年代にかけて国内の不満を引き起こし、社会主義政権誕生のきっかけとなった。
社会主義に強く共感していたウーゴ・チャベス陸軍中佐は、1989年2月27日にカラカスで発生した貧困層の蜂起(カラカス暴動)に陸軍が出動し、蜂起した人々に発砲して多数の死傷者を出したことに衝撃をうけ、1992年2月にクーデターを試みたが、失敗し、投獄された。降伏の際に行ったテレビでの会見は多くの国民に強い共感を呼び起こした。
クーデター失敗後は、同志を第5共和国運動(MVR)に組織し、武装闘争から合法的な政治活動に転換。釈放後の1999年、医療や福祉などに不満をもつ貧困層の圧倒的支持を受け、大統領に選出された。
民主的に大統領に就いた後、富裕層が支配するマスメディアと対決姿勢を強め、石油公団(PDVSA)への統制強化など、反米・社会主義路線を明確にし、これを「ボリバル革命」と呼んだ。
2003年頃から石油産業の国家支配強化を始め、2007年に外資主導モデルを終了させて、事実上の全面国有化を実施。そこから得られた巨額の利益を貧困層に再分配する政策を強化。900万世帯が住宅を手に入れ、多くの若者が大学教育を受ける機会を得たとされている。
当時のラファエル・ラミレス石油相は「我々は貧困を70%から7%に減少させた。これは大きな社会的進展だ」と語っている。だが、チャベス氏は2013年にガンで死去。直前に後継指名を受けたニコラス・マドゥロ氏は独裁的な政権運営を行い、石油産業は急速に衰退していった。
マドゥロ政権下では、米国をはじめとする西側諸国との経済的な対立が激化し、米国が17年から強化した経済制裁で外国企業の投資を妨げ、ベネズエラの石油産業が圧迫された。その結果、生産量が急減し、PDVSAの経営不振が一層深刻化した。
90年代末以降の生産量は70%以上減少。現在は日産100万バレルにとどまり、世界の生産国の中で21位に甘んじている。この急激な減産は、経営腐敗、インフラ老朽化や、投資不足、管理体制の問題が原因といわれる。
米国がベネズエラの石油に再び注目する背景には、米国自体が生産している軽質原油に対して最適化された精製設備を持つという事情がある。米国は、軽質原油とともに重質原油を確保する必要があり、ベネズエラが保有し、巨大な埋蔵量を誇る重質油に改めて注目している。米国のエネルギー企業、特にシェブロンは、17年の制裁強化を受けて一時的に撤退していたが、22年には米政府から特別な許可を得て、再びベネズエラでの石油輸出を再開。同社は、すでに約3千人の従業員をベネズエラで雇用しており、今後の事業拡大も視野に入れている。
トランプ氏は、ベネズエラの石油産業を「米国の才能と技術で築かれた」と主張し、米国がその権利を回復すべきだと強調。彼は、過去の社会主義政権により石油産業を「盗まれた」とし、それを取り戻すことが米国の戦略的利益にかなうと考えている。ベネズエラの石油産業に関しては、「米国の企業が再び参入し、インフラを再建し、国家の収益を生み出す」と述べ、米国企業の利益が最大化されるべきだとの立場を示している。
一方、現在のベネズエラの石油産業における最も重要なパートナーは中国だ。過去20年間、中国はベネズエラに多大な投資を行い、特に協力関係を深めてきた。中国国有企業である中国石油天然気集団(CNPC)は、PDVSAと共同で石油開発を行い、ベネズエラ産の石油の多くを中国に輸出。中国にとり、ベネズエラの石油はエネルギー供給の安定性を確保するために欠かせない重要な資源であり、米国との競争が激化する中で、その影響力を維持しようとする動きが強まっている。
中国は米国の軍事介入に反発しており、マドゥロ政権の合法性を支持。中国政府は、米国による干渉を批判し、ベネズエラ内政への関与を避けるべきだと主張。これは、米国と中国の間での地政学的な対立を背景に、南米が重要な舞台となっていることを示している。









