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【7日の市況】トランプ関税再提起でIbovespa急落、前営業日比1.26%安の13万9,489.70ポイント=ドルが対レアルで0.99%上昇して5.478レアル

2025年7月10日

 7月7日、米国のトランプ大統領が再び貿易関税を公言したことを受け、7日のブラジル株式市場は大きく下落した。主要株価指数Ibovespaは前営業日比1.26%安の13万9,489.70ポイントで取引を終え、1,773.86ポイントの下落は5月21日以来最大となった。為替市場ではドルが対レアルで0.99%上昇し、1ドル=5.478レアルを付けた。ブラジル国債の先物金利(DI)も全体的に上昇し、リスク回避の動きが鮮明となった。

 米国市場も週明けの取引で軒並み下落。独立記念日の連休明けということもあり、ダウ平均は1.12%安、ナスダックは0.98%安、S&P500は1%安と軟調に推移した。

トランプ氏の「関税発言」に再び市場が揺れる

 今回の市場動揺の直接的な引き金は、トランプ氏がSNS上で発した新たな通商方針である。同氏は8月1日より、日本と韓国からの輸入品に25%の関税を課す方針を示し、その他12カ国に対しても通商条件を見直す書簡を送るとした。さらに、BRICS諸国に対して「反米的政策」を理由に、追加で10%の関税を課す可能性にも言及。対象となる政策の具体的な内容には触れていないが、貿易戦争の再燃を連想させる内容に、世界市場は過敏に反応した。

 ブラジル政府はこの発言を受けて、同国が加盟するBRICSの重要性を改めて強調。一方で、中国政府は関税を「圧力の道具として使うことに断固反対する」と強い口調で非難した。

インフレ鈍化も相場の支えにならず

 ブラジル国内ではインフレ指標が市場予想を下回り、物価上昇圧力が落ち着いてきている。6月のIGP-DI(総合卸売物価指数)は前月比でマイナス1.80%と、5月の同0.85%の下落幅を上回るデフレとなった。中央銀行の週次報告「Boletim Focus」でもインフレ見通しが6週連続で下方修正されるなど、金利環境には好材料が見られた。

 しかし、グローバルなリスクオフの流れには抗えず、主要銘柄は総じて売り優勢となった。資源大手ヴァーレ(VALE3)は鉄鉱石価格の下落と相まって1.47%安。ペトロブラス(PETR4)は原油価格が上昇したにもかかわらず0.19%の小幅安となった。PRIO(旧PetroRio)は1.93%安、Bravaも1.61%下落した。

 金融株も軒並み軟調で、国営銀行BB(BBAS3)は1.65%安、ブラデスコ(BBDC4)は0.96%安。Eletrobras(ELET3)は目標株価引き上げ報道があったにもかかわらず2.10%安となった。

フリゴリフィコ関連が数少ない上昇セクターに

 こうした中で、唯一目立った上昇を見せたのが食肉加工のフリゴリフィコ(食肉企業)関連だった。BRF(BRFS3)は9.37%高と急伸、Marfrig(MRFG3)も4.09%上昇した。Minerva(BEEF3)も1.16%と堅調。米国市場における食料品セクターへの防衛的需要の高まりや、中国市場からの需要シフト期待が背景にあるとみられる。

市場の視線は「現実化する関税」へ

 経済専門家らは、今回の動きが単なる選挙向けアピールに留まらず、実際の関税発動につながる可能性が高いとして警戒を強めている。FIAビジネススクールのカルロス・オノラート教授は、「トランプ氏のスタイルは一貫しており、“脅して、引いて、また押す”を繰り返すものだ。今は静観の時期だが、投資家は慎重な姿勢を維持すべきだ」と指摘した。

新興国市場への影響とブラジル経済への懸念

 ESPMのジョルジ・フェレイラ・ドス・サントス教授は、「今回のような保護主義の台頭は、まず外国人投資家によるポートフォリオ投資の減少を招く」と述べ、新興国全体に対する資本流入が減速するとの見通しを示した。とりわけ、鉄鋼、アルミ、紙パルプ、農産品など、輸出依存度の高いセクターが影響を受けやすいとされる。

 一方で、中国が米国からの輸入を抑制した場合、代替供給先としてブラジル製品への需要が高まる可能性もあり、農業・鉱業・パルプ分野には一定の追い風が期待されるという。

資金コストの上昇とリスクプレミアムの拡大

 また、保護主義による不透明感の高まりは、いわゆる「カントリースプレッド(国債利回り格差)」を拡大させ、ブラジルの資金調達コストを押し上げる要因となる。サントス教授は「国全体のリスクプレミアムが上がると、企業にとっての借入コストも上昇する。通貨レアルが下落し、外貨建て資金調達も困難になる。いわば“パーフェクトストーム”の様相だ」と述べた。

米国では「内需主導型セクター」に追い風も

 米国内では、輸入品への依存度が低い小売、建設、公益などの内需型産業が恩恵を受ける可能性がある。また、国防関連、国内IT産業、インフラ分野も、米政府による「アメリカ製重視」の政策に支えられるとみられている。

 米国債は安全資産として買われ、10年・20年・30年物国債の利回りはいずれも4.9%近辺と、過去最高水準に接近している。

 今後の焦点は、トランプ氏の関税発言がどこまで実行に移されるかにある。投資家心理は引き続き不安定で、世界経済の行方は一段と読みにくくなっている。


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