《ブラジル》燃料減税のカミカゼ法案が物議醸す=ゲデスや両院議長が反発=連邦政府も再考の構え

燃料関連の減税法案の一つとして上院に提出された別名「カミカゼ」法案にパウロ・ゲデス経済相が強く反発しており、上下両院の議長も難色を示している。これにより、連邦政府が代案を求める事態となっている。10日付現地紙などが報じている。
今年は大統領選などが行われるため、政治家が選挙年に好んで行う減税法案の行方がかねてから注目されている。とりわけ注目を集めているのは、国際的なコモディティ価格の上昇で急騰中のディーゼル油やガソリンをはじめとした燃料だ。
燃料減税関連では、連邦議会に二つの憲法補則法案(PEC)が出されている。一つはクリスチノ・アウレオ下議が出した法案だ。同下議はシロ・ノゲイラ官房長官が党首を務める進歩党(PP)の議員で、ゲデス氏の目をかいくぐった法案は大統領府内で書き直されていることから、減税を強く希望するボルソナロ大統領の意向を反映させたものとみられている。だが、同PECは審議に必要な171人の下議の署名を集められていない。
それ以上に注目されているのは、さらに過激な「カミカゼ」PECだ。上院では27人の署名で審議対象となるが、カルロス・ファーヴァロ上議(社会民主党・PSD)が提案した法案には既に31人の署名を得ている。署名者には大統領長男フラヴィオ上議も含まれている。
このPECでは、バイオディーゼルを含むディーゼル油、ガス、電気代の減税に加え、高齢者の公共交通利用時の恩恵確保で50億レアルを州や市に回すことや、トラック運転手への月1200レアルのディーゼル油手当も提案している。
同法案ではさらに、現在は550万世帯に価格の50%を援助するボチジョン(台所用ガスボンベ)支援金を、社会保障プログラム「アウシリオ・ブラジル」を受給している1750万世帯に100%まで援助することも定めている。
経済省は既に、カミカゼPECが原案通り承認されれば、税収減と支出増で1千億レアルに及ぶ影響が出ると試算している。
ゲデス経済相はこの案に強い懸念を示し、議会に再考を促し始めている。同相はディーゼル油にのみ、商品流通サービス税(ICMS)を通じた減税だけで済ませるよう求めている。
アルトゥール・リラ下院議長(PP)もゲデス氏の考えに賛意を示し、「昨年、下院が承認した補填法(PLP11)の成立に集中すべきだ。あくまでも国民のための適切なICMS調整を行うべき」と苦言を呈している。
ロドリゴ・パシェコ上院議長も「(税収減分の補填回避用)PECを使ってまで減税を行う必要はない」との見解を示しており、連邦政府も、現在上院で審議中の補填法に含める形での減税の可能性を模索し始めている。
カミカゼPEC発案者のファーヴァロ上議は、「ゲデス経済相の路線が国民を貧困に至らしめたのだから、この位は行うべきだ」と強気の姿勢だ。
カミカゼPECは経済省が考えていた範囲を大幅に超えており、財政悪化、インフレ高進の可能性も指摘されている。