《ブラジル》議会は大統領のシルヴェイラ下議恩赦容認?=判断は最高裁の訴訟対応に=被選挙権の回復は絶望的

【既報関連】21日にボルソナロ大統領がダニエル・シルヴェイラ下議に出した恩赦に関し、連邦議会としては反対を唱える意向はなく、その判断は最高裁に任されることになりそうだ。最高裁には既に恩赦の撤回やその無効性を主張する訴えが届いており、最高裁内でも違憲とする見解が出ている。23〜25日付現地紙、サイトが報じている。
最高裁判事全員の更迭と軍政令第5条(AI5)の復活などを唱えたことで判事投票10―1の圧倒的大差で8年9カ月の実刑判決を受けたシルヴェイラ氏に関して、ボルソナロ大統領が恩赦を出したことは政界、司法界に大きな波紋を投げかけている。
ボルソナロ政権で法相を務めたセルジオ・モロ氏(ウニオン・ブラジル)は、大統領が最高裁の判断に逆らう恩赦を出したことで、「国の秩序が不安定になる」と不安を語り、「懲罰はあらゆる人に平等に与えられるべきだ」と語った。
大統領候補のシロ・ゴメス氏は、所属政党の民主労働党(PDT)とともに、最高裁に恩赦無効を求めて訴えた。同党のカルロス・ルピ党首は、「公共のものに対して出される恩赦を、大統領が個人的な知人に対して利用した」ことを問題視している。同様の訴えはレデ(REDE)も行っている。
また、連邦議会内でも、労働者党(PT)や社会主義自由党(PSOL)が恩赦を無効にする動きを呼びかけている。彼らは恩赦を議会内で覆すことを主張している。
だが、ロドリゴ・パシェコ上院議長は「恩赦は司法の範囲内での判断であり、立法機関の範疇でのことではない」とし、上院では恩赦に対する行動をとることはないとの見解を示している。ただ、同議長も「この恩赦でシルヴェイラ氏の有罪が覆ることも、被選挙権が戻ることもない」と重ねて強調している。
この件に関しては下院も同様の姿勢をとるとみられている。アルトゥール・リラ議長は20日、「シルヴェイラ下議罷免に関する最終決定は下院が行う」との訴えを起こしている。最高裁は、議席剥奪と10月の選挙に関する出馬禁止、実刑という判決を下したが、過去の判例に従えば、12月までの任期に関する最終決定権は議会にある。20日の判決で自動的に罷免となるか否かの判断は最高裁内部でも割れている。
また議会内での恩赦阻止に関しては、PTのグレイシ・ホフマン党首も、「恩赦は民主主義への脅威」としながらも、「議会ではボルソナロ氏支持派の反対などもあり、進まないだろう」との見解を示している。なお、大統領選でボルソナロ大統領との対決を予想されているルーラ元大統領はこの件に関して無言を貫いており、リラ下院議長がルーラ氏の姿勢を批判している。
大統領による恩赦の行方は、PDTやレデの訴えを最高裁がどう判断するかにかかっている。同件の担当は既にローザ・ウェベル判事に決まっているが、「恩赦の範囲」が争点とみられており、シルヴェイラ氏の出馬禁止は保つことが前提と予想されている。シルヴェイラ氏自身は上院選出馬を望んでいる。