《サンパウロ州》肝炎や癌の治療薬などが不足=ウクライナ危機などが影響か

サンパウロ州内の公立病院や私立病院では1月以降、慢性病の治療に使う高額治療薬も含む医薬品の不足が起きていると22日付G1サイトなどが報じた。州保健局によると、現時点では保健省が供給する医薬品の内、少なくとも22品目が不足しているという。
サンパウロ州市保健局評議会(Cosems―SP)によると、病院で不足している医薬品の中には、臓器移植後の拒絶反応を防ぐために使うミコフェノール酸、腎不全の人の貧血治療に使うヒトエポエチンアルファ、C型肝炎の治療に使うリバビリンなどが含まれているという。
Cosemsが12日にリストアップした供給が不規則(不安定)で州内では十分な量が入手できない高額治療薬には、癌(腫瘍)の治療薬2種とその他の薬19種が含まれている。州保健局によると、保健省が供給すべき134種の医薬品中22種が不足していた。不足している22種は継続使用が必要な高額治療薬で、国が供給するべきものだ。また、1~3月には、その他の薬約30種類でも納品や配達の遅れが見られたという。
医薬品不足は公立病院だけの問題ではない。私立病院でも医薬品の不足や値上がりに直面しており、複数のタイプの手術は経費急騰で実施が困難になっている。
私立病院の組合によると、医薬品や手術で使う品物の入手が困難になったのはウクライナ危機のせいだという。同危機によるロジスティクスの問題は、ロシアやウクライナとその周辺の諸国だけでなく、インドや中国といった国からの資材の輸入にも影響している。
製薬会社の組合によると、病院などに納入する医薬品の価格表の価格が生産コスト高騰分を補うには不十分なために医薬品の生産量が減っているのだという。同組合によると、医薬品が不足しているのは病院だけで、薬局などの店頭での品不足は起きていないという。
国家衛生監督庁(Anvisa)によると、価格規制は国民による医薬品へのアクセスを保証するための措置だが、必須医薬品は国内では販売されていないために品不足が起き、治療の維持や患者の安全を脅かしているのだという。
Anvisaは製薬会社の利益と国民が購入可能な価格とのバランスを取るために、現在の価格規制のあり方を早急に検討する必要があると見ている。
医薬品の不足はコロナ禍による需要急増などでも起きたが、統一医療保健システム(SUS)で使うための予算のかなりの部分を軍が使用したといった報道もあり、Anvisaや保健省の管理のあり方にも疑問が生じている。