米関税問題で政府と議会が結束=ボルソナロ派の弱体化進む

米国によるブラジル産品への関税引き上げ発表を受け、ウゴ・モッタ下院議長(共和者・RP)とダヴィ・アルコルンブレ上院議長(ウニオン)は16日、ジェラルド・アルキミン副大統領兼商工開発サービス相(ブラジル社会党・PSB)との会談に臨み、国家主権の擁護を強調。ルーラ政権(労働者党・PT)主導による対抗措置を全面的に支持する姿勢を示した。この動きは、米国の措置を擁護するジャイール・ボルソナロ前大統領(自由党・PL)の政治的影響力を著しく弱体化させる結果をもたらすと同日付カルタ・カピタルなど(1)(2)が報じた。
この会談には、グレイシ・ホフマン大統領府渉外室長官(PT)や、レナン・カリェイロス上議(民主運動・MDB)、ジャケス・ワギネル上議(PT)、ウェヴェルトン・ロシャ上議(民主労働党・PDT)などの有力議員も出席していた。
この会談では、ブラジル側の対応は行政府が主導し、立法府が全面的に支持する方針で一致。アルコルンブレ氏は、「連邦議会は国家の利益と主権の擁護に向けて団結している。外部の決定によって我が国の発展を阻害されることは断じて許さない」と力説した上で、「この状況はブラジルとブラジル国民に対する一種の攻撃だ。決然と、かつ冷静な態度で臨む必要がある」と語った。
モッタ氏もこれに同調し、「議会側では政府の措置を迅速に支持し、行動する準備が整っている。国民も政治的背景による外部からの主権侵害を決して容認しないという意識を持っている。一致団結し、責任感を持って難局を乗り越えていく」と強調した。
一方、アルキミン副大統領は、米政府が関税引き上げの根拠として示した説明を批判。米国は対ブラジル貿易収支において黒字を維持している上、米国からブラジルへの輸出品の多くは関税免除の対象となっている事実を強調。外交的かつ商業的な解決策を模索し、決定撤廃に向けて努めると述べた。
議会指導部と行政府による連携行動は、トランプ政権の措置を私的な動機で擁護し、自身やその側近に対する恩赦措置を画策しているボルソナロ前大統領の政治的孤立を一層際立たせるものとなった。連邦議会は、ボルソナロ派の訴えを完全に無視し、その影響力を排除するとともに、ルーラ政権への全面的な支持を改めて示す形となった。
この動きに対し、ボルソナロ氏三男のエドゥアルド・ボルソナロ休職下議(PL)は同日、SNS上でこの会談を批判し、「ボルソナロ前大統領を孤立させたところで状況は変わらない。変えるのは恩赦の可決だ」と主張。2023年1月8日の三権中枢施設襲撃事件に関与し、有罪判決を受けた人たちへの恩赦を改めて強く求めた。(3)
また、米国による対ブラジル輸入品への50%の関税措置は外交や通商の問題ではなく、ブラジル内の司法の「濫権」に起因するものだとする独自の見解を示し、関税を「タリファ・モラエス(モラエス税)」と皮肉って批判。これは、ボルソナロ派への司法的対応を強めているアレシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事の姿勢が、米国側に「ブラジルは信頼できない」との印象を与え、制裁として今回の関税強化につながったとする主張だ。
エドゥアルド氏はさらに、「モッタ氏やアルコルンブレ氏は我々を頼ってほしい。議会こそがこの難題を解決に導くべきだ」と述べ、政府ではなく、議会主導による対応をと呼びかけた。