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環境ライセンス基本法=下院が上院案を修正可決=「荒廃法案」との批判出るも

2025年7月18日

16日の下院本会議の様子(Lula Marques/Agência Brasil)
16日の下院本会議の様子(Lula Marques/Agência Brasil)

 【既報関連】下院が17日未明、新たな環境ライセンスの規則を定める法案を承認した。同法案は上院が5月に承認した法案2159/2021号に修正を加えたもので、大統領裁可に回されたが、新たなタイプのライセンス創設や登録手続き簡素化など、環境ライセンスの取得をより容易にする内容に、環境活動家らからは「荒廃法案」との批判も出ていると17日付G1サイトなど(1)(2)(3)が報じた。

 環境許可を巡る法案審議は下院で17年、上院で4年の計21年続いており、下院が承認した法案に上院が修正を加えたため、下院に差し戻された後、29の修正を加えて審議、承認された。

 最終法案は環境許可の取得プロセスを根本的に変えるもので、連邦議会の農業牧畜議員戦線(FPA)などは、官僚機構の効率化と戦略的なプロジェクトの迅速化を目的とした修正を加えたと主張。農務省や鉱山動力省は戦略的なプロジェクト迅速化などに賛同する姿勢を見せていた。

 一方、気候観測所や環境省などの組織は、環境リスクのあるプロジェクトの認可を容易にする法案は環境安全保障へのリスクや不処罰の拡大を招く上、伝統的なコミュニティ保護も不足していると警告していた。

 下院政府リーダーのジョゼ・ギマランエス下議(労働者党・PT)は与党議員らに反対票を投じるよう求めていたが、深夜に及ぶ論議の末、267対116で承認された。

 従来の環境ライセンス法と大きく変わる点の一つは、大統領府直属の政府評議会が戦略的と判断するプロジェクトを対象とする特別環境ライセンス(LAE)の創設だ。戦略的プロジェクトの優先順位は2年毎に決められる。LAEは、プロジェクトが「重大な環境悪化」を実際にあるいは潜在的に引き起こしている場合でも付与される可能性がある。

 ライセンスの申請から、分析、決定までの期間は12カ月間で、承認後のライセンスは5~10年間有効となる。

 また、環境への影響調査を必要とせずに申請できる、順守コミットメント(法令や規定を守るという自己宣言)による簡易環境ライセンス(LAC)も新しいライセンスだ。LAC取得に関心がある企業が行う活動の規模と汚染リスクを定義する責任は連邦機関が負い、有効期間は5~10年だ。LACが利用できるのは舗装や高速道路拡幅工事、道路用地における送電線の拡張と敷設等で、既に舗装された高速道路や維持浚渫など、既存の施設や道路用地、地役権区域におけるインフラの維持管理や改良に関わるサービスや工事は環境許可が免除される。

 LAC取得には、地域の一般的な特徴や当該活動の設置・運営方法、プロジェクトの種類による環境への影響、必要な環境管理措置に関する事前の知識などの一定条件を満たす必要がある。また、環境許可が必要となる場合は植生の伐採はできないことも規定されている。

 当初は必須だったプロジェクトの特性評価報告書(RCE)のサンプル分析は任意となった上、上院での修正で、大規模または高リスクの鉱業事業も、特定の法律で対処しない限り、国家環境評議会(CONAMA)の基準は適用されないことになった。

 特定の法律による対処の一例は、ミナス州マリアナ市やブルマジーニョ市で起き、伯国史上最大規模の環境犯罪となった崩壊事故の大元である鉱滓ダムで、その安全性は国家政策を規定した法律14066/2020号や国家鉱業監督庁の決議95/2022号で規定されている。(4)

 また、先住民族の土地への影響に関する意見を述べる責任を負う国立先住民族保護財団(Funai)や黒人奴隷の子孫達の集団地(キロンボラ)に関する責任を負う人種平等省、文化遺産に関する責任を負う国立歴史美術遺産院(Iphan)、自然保護区に関する責任を負うシコ・メンデス生物多様性保全研究所(ICMBio)などの環境ライセンスに関わる一部機関がライセンス取得プロセスに参加できる活動や企業の種類を決める権限は、最大45日以内に意見を提出した時に限り検討されるよう、制限されている。

 16日の審議は賛否両論が飛び交い、投票結果が出たのは17日未明だった。反対派の一人で先住民族議員のセリア・カクリアバ下議(自由社会党・PSOL)は、「未来の絶滅者達が過去40年間で最大の後退を承認」「下院が荒廃法案を承認した」とSNSに投稿した。

 環境議会連合コーディネーターのニルト・タット下議(PT)は、同法案が承認されても環境ライセンス取得のボトルネックは解消されないと強調。サミア・ボンフィン下議(PSOL)は同法案の承認はマリアナやブルマジーニョのような悲劇の再発につながる可能性があるとし、ドゥダ・サラベルト下議(民主労働党)は、同法案はブルマジーニョで起きたValeのダム決壊事故で犠牲となった272人の遺族に対する敬意を欠くものだと述べた。

 環境NGOのWWWブラジルは、「荒廃法案」は環境ライセンス制度を崩壊させ、憲法の原則に違反し、環境保護のための手段を弱体化させるもので、LACは適切な技術的分析を不可能にすると強調。人々や気候、生物多様性などに、前例がなく、取り返しのつかない環境破壊への道を開くとの声明を出している。


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