《ブラジル》シルヴェイラ下議問題で最高裁が大統領恩赦の審議示唆=「被選挙権は回復せず」と念押しも=罷免審議は下院で実施か?

20日に最高裁が10―1で有罪判決を出した後、ボルソナロ大統領が恩赦を出したことでその先の展開が注目されているダニエル・シルヴェイラ下議の処遇について、最高裁、連邦議会、ボルソナロ大統領支持派がそれぞれに動きを起こしている。25〜27日付現地紙、サイトが報じている。
26日、最高裁のローザ・ウェベル判事はボルソナロ大統領に対し、10日以内にシルヴェイラ下議に対して恩赦を出した理由についての説明を行うよう命じた。同判事は、「今回の大統領恩赦は個人に向けたもので無効だ」と訴えた民主労働党(PDT)やレデ(REDE)が行った訴えに対する審理の報告官を務める。
ただ、大統領からの返答いかんにかかわらず、ローザ判事は恩赦の是非に関しては、単独の判断によって決める意志はなく、全体審理にかけることを決めている。同件に関する全体審理の日時はまだ決まっていない。
26日はさらに、シルヴェイラ氏の関する審理の報告官として、8年9カ月の実刑などを求刑したアレッシャンドレ・デ・モラエス判事が、「恩赦が出たとしても、シルヴェイラ氏の有罪が覆るわけではなく、被選挙権が復活する訳でもない」と釘をさす発言を行った。
有罪が覆らない場合はフィッシャ・リンパ法に抵触し、8年間選挙に出ることができなくなるためで、それは今年の10月の選挙から有効となる。これに関しては、モラエス判事のみならず他の判事も、「有罪判決の時点で既に出馬は禁止」とする見解を表明している。
モラエス判事は、ボルソナロ大統領の恩赦が適切なものかについての全体審理を行うことも示唆している。
その一方で、連邦議会ではアルトゥール・リラ下院議長、ロドリゴ・パシェコ上院議長が共に、「シルヴェイラ氏の下議罷免か否かを決めるのは下院で」との意向を26日に表明している。
パシェコ上院議長は既に、大統領恩赦に関しては「司法の管轄により触れることができない」との判断を示している。最高裁のシルヴェイラ氏に対する判決は、実刑判決と議席剥奪、被選挙権の停止を定めているものの、下議罷免に関する最終判断は、慣例通り、連邦議会が決めることを主張するリラ下院議長からの訴えが認められる見込みだ。
だが、連邦議会が罷免に関する最終判断の責任を負った場合も、12月までという現在の任期に関する決定しかできず、シルヴェイラ氏の今後の政治生命を救うところまではできない。
ボルソナロ派の議員たちの間では、ビア・キシス下議のように「大統領の恩赦でシルヴェイラ氏は出馬可能では」と訴える声が出ている。だが、今回の恩赦の範囲は刑執行に関してだけである上、恩赦の有効性に関する最終判断を行うのが最高裁であるため、覆すのは難しいところだ。
最高裁内部では、シルヴェイラ氏への判決そのものは覆らないことから、大統領恩赦に関する判断は10月の選挙が終わってからで良いのではないかと、先延ばしを提案する声と、うやむやにせず早めに決着を、と主張する声があるという。