《ブラジル》ボルソナロが敵対中のモラエス判事と不敵に肩叩き合い話題に=職権乱用で訴え続ける最中

19日、高等労働裁(TST)判事の就任式で、ボルソナロ大統領が最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事と会い、挨拶を交わしたことが話題を呼んだ。ボルソナロ氏は17日にモラエス判事を「職権乱用」で最高裁に訴えたが却下され、総弁護庁(AGU)に訴えなおしたばかりだ。19、20日付現地紙、サイトが報じている。
因縁の二人の対面はTSTで行われた複数の新任判事就任式で起こった。同裁長官のエマノエル・ペレイラ長官から新判事たちの首に認証の飾りをかけてくれと求められたボルソナロ大統領が、それに応じて立ち上がった際、最前列に座っていたモラエス判事に近づき、手を差し伸べた。
すると、モラエス判事も立ち上がり、握手を交わした後、互いに肩を叩き合い、軽い会釈も交わした。
これは意外な瞬間として受け止められた。それはボルソナロ氏が17日に最高裁に、モラエス判事がフェイクニュースの捜査などで職権を乱用していると訴えたりしていたからだ。フェイクニュース関連の捜査では、ボルソナロ氏や、同氏を熱心に支持する政治家や企業家、ジャーナリストらが厳しい捜査を受けている。
大統領とモラエス判事の対立は、20年4月に同判事がコロナ禍対策の権限を大統領でなく自治体にあると判断した頃から始まり、フェイクニュース捜査で悪化。昨年の9月7日の独立記念日に行われた反最高裁デモは主にモラエス判事に向けられたもので、ボルソナロ氏も参加していた。
だが、大統領の訴えは翌18日にジアス・トフォリ判事が却下。大統領はこれを受け、同日中にAGUにモラエス判事を職権乱用で訴えている。同日はそれと前後して、ボルソナロ大統領が選挙に関する虚報を拡散し続けていることに関する訴えを担当しているローザ・ウェベル判事が、連邦検察庁に捜査開始に関する意見書を出すように求めている。
だが、TSTでの挨拶は、当然「和解」とは見られていない。それはこの後、モラエス判事が同式典で紹介され、会場内から大きな拍手が起こった際、大統領は拍手しなかったためだ。このときの拍手は大統領自身が受けたものよりずっと大きく、長く続いた。
このボルソナロ氏、モラエス氏の間で板挟みになっているのが連邦検察庁だ。検察庁では来週、大統領のモラエス判事に対する訴えに関する意見書を出すことになっている。
2019年に大統領がアウグスト・アラス長官を指名して以来、同庁はボルソナロ氏に対して甘い判断をしていると指摘されているが、検察庁関係者は既に「モラエス氏捜査の余地はない」との見解を示している。三権の調和を脅かしかねないものであるためだ。
検察庁は来週、フェイクニュース捜査の一環で逮捕され、実刑判決も受けたダニエル・シルヴェイラ下議に対して大統領が出した恩赦に関する意見書を出すことも求められている。検察庁内では、これらの意見書が大統領府と最高裁との間の対立を悪化させたりしないように配慮しようとする動きが出ている。