《ブラジル》僅か40日でペトロブラス総裁また更迭=本気で価格政策変更狙う?=再選向けの選挙対策か

連邦政府が23日夜、現政権で3度目となるペトロブラス(PB)総裁の更迭交代を発表したと23、24日付現地紙、サイトが報じた。
アドルフォ・サクシダ鉱動相は総裁交代を伝える声明でフェレイラ・コエーリョ前総裁の労をねぎらう一方、「国際市場における炭化水素(原油の主成分)の極端な価格変動でブラジルが非常に困難な時期を過ごしている」と述べた。
ブラジルは12カ月間で12%超という高インフレの中にある。燃料価格は最大のインフレ要因で、トラック運転手や企業、庶民の懐を直接、間接に圧迫するため、再選を狙うボルソナロ大統領にとり、燃料価格の調整権を持つPBの総裁人事は大きな関心事だ。
今回の総裁更迭は前総裁就任から僅か40日間で行われ、関係者を驚かせた。だが、鉱動相は、燃料やエネルギー関連の価格は種々の要因の影響を受けている事や、雇用と国民所得の拡大には民間投資の強化が必要である事などを強調。「エネルギー部門のバランス維持のために働き、貢献する事はPBの価値を増し、社会全体に貢献するために不可欠」との表現で総裁更迭を正当化した。
これらの言葉や、後任総裁がゲデス経済相の右腕的存在で行政手続簡素化局長だったカイオ・マリオ・パエス・デ・アンドラデ氏である事は、ボルソナロ氏が以前から批判しているPBの価格政策変更を念頭に置いた人事である事を示している。
サクシダ氏はボルソナロ氏の旧友で、就任直後からPB民営化を唱え、ゲデス経済相にも検討を要請するなど積極的に動いている。今回の総裁交代に際しては、大統領がサクシダ氏にPB総裁や経営審議会の人事を白紙委任したとの報道も流れており、PBの株価暴落なども招いた。
ガソリン価格は3月以降、70日以上調整されておらず、国際価格との差が8%に達している。それだけに、新たな価格調整に向けた芽を摘むための政府介入ともいえる総裁交代が、今後の価格調整に影響を与える事は必至だ。
国際的な原油価格と為替の変動に基づいて価格を調整するという価格政策は、ジルマ政権まで多額の負債を抱えていたPBの財政再建を支えた柱の一つだ。
ウクライナ危機で極度に不安定になった原油価格の動きを無視して不用意な変更を加えれば、同社の財政や経営を窮地に追い込む可能性がある。一部専門家は、今回の人事は大衆主義の結果で、リベラル経済などではないとしている。