《ブラジル》下院がICMS上限設定を承認=燃料、光熱費高騰抑制狙って=知事たちは抗戦の構え

下院は25日、地方税の商品流通サービス税(ICMS)の課税率に上限を設ける法案を承認した。これは燃料費や電気代の高騰を抑えるための手段として連邦政府が強く望んでいたもの。連邦自治体(以下、州)にとっては大幅な税収減となることから、知事たちが最高裁や上院に働きかけて無効にすることを望んでいる。25、26日付現地紙、サイトが報じている。
この法案提出の背景には、ペトロブラスが価格を決めているガスやディーゼル油などの燃料費やそれらの値上げに伴って派生する電気代の高騰がある。これらの項目は、昨年、今年と連続して年間10%超えが見込まれているインフレ高進の主要圧力とされている。
再選を狙うボルソナロ大統領にとってはとりわけ、選挙年のインフレ高進は是が非でも避けたいところだ。
この法案では電力、燃料、天然ガス、航空燃料、通信、公共交通を「必須項目」と認定し、これらの項目に対するICMSは17〜18%を上限とすることが明記されている。
報告官のエウマル・ナシメント下議(ウニオン)によると、今回の基準は、昨年11月に最高裁がサンタカタリーナ州に対して出した「電力や通信のような必須な財やサービスのICMSの一般上限以上の引き上げは違憲」との判決に則ったものだという。また、「ミナス・ジェライス州では酒類のICMSが18%なのに、家庭用電力では30%だ。リオ州では32%に至っている」と上限以上の徴税が行われている現状を指摘した。
野党側はこれに対して、「問題はペトロブラスによる価格設定であり、ICMSでは根本解決にならない」として反対の姿勢も見せた。だが、実際の投票では賛成403、反対10という圧倒的な差で承認された。法案は上院に回され、審議されることになる。
承認の決め手となったのは、法案成立後に予想される州の税収減に対する対策も盛り込まれたことだ。同法案では、前年比で5%以上の税収減となった州には国が補てんを行うことを定めている。補てんは州から国への負債返済と相殺する形で行われる。この項目は法案の第一段階では記されていなかったが、全国市長前線(FNP)が圧力をかけたことで加わった。
だが、州や市は今回の法案承認を不服として、上院が否決するよう働きかけている。また、最高裁に違憲と訴えることも検討中だ。
ICMSは州税の大半を占める。2021年の場合、全州の収入の86%にあたる6億5200万レアルがICMSによる収入だ。
また、市にとってもこれは切実な問題だ。ICMSの一部は市にも配分されているためで、法案では、州が国による補てんを受ける必要がないと判断された場合、州も市に財源補てんを行う義務がないとされている。
上院は地方との繋がりが強いため、ゲデス経済相らがロドリゴ・パシェコ上院議長に積極的に働きかけているが、同議長は「上院のリーダーたちとも話し合って討議する」としている。法案作成者のダニーロ・フォルテ下議(ウニオン)は、法案が成立すれば電気代は最大で11%安くなると見ている。