《ブラジル》最高裁カシオ判事が罷免州議の議席を回復=ボルソナロが大喜び=虚報拡散規定に反し物議

最高裁のカシオ・ヌネス・マルケス判事は2日、選挙高裁が虚報拡散で議席を剥奪したボルソナロ大統領支持派のパラナ州議、フェルナンド・フランシスキーニ氏を復職させる司法判断を下した。これは「虚報拡散者は選挙登録抹消」との選挙高裁の判断と矛盾し、物議を醸している。2、3日付現地紙、サイトが報じている。
カシオ判事の司法判断は、フランシスキーニ氏ならびに当時の所属政党の社会自由党(PSL、現在はウニオンに吸収合併)が起こした異議申立てに応えたものだ。
フランシスキーニ氏は2018年の統一選時、具体的な証拠も示さずに電子投票の不正を主張する虚報を広めた。これらの虚報は、その後も続いているボルソナロ大統領やその支持派の電子投票不信にもつながっている。
2021年10月、選挙高裁は判事投票6対1でフランシスキーニ氏の当選を抹消。ランシスキーニ氏らはこれに対し、有権者の投票意向の無視や、これにより他のPSL州議の立場にも影響が出たとして訴えていた。
カシオ判事はこれに対し、「選挙高裁の規定変更は2021年12月」「ネットでの発言は選挙違反にはあたらない」と判断し、フランシスキーニ氏の議席回復を認めた。これにより、8年間の出馬停止も覆った。
ボルソナロ大統領はこの司法判断に大喜びし、「選挙高裁は選挙の透明性を求める民主主義を攻撃した」と選挙高裁を批判した。また、「私が提案した透明性を上げるための軍による監視を選挙高裁が断ったことは嘆かわしい」とし、エジソン・ファキン同裁長官への批判も行った。
だが、カシオ判事の司法判断は物議を醸している。それは、次期選挙高裁長官のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事が外国大使たちの前で、「選挙に関する虚報を拡散する人物は選挙資格を剥奪される」と宣言し、同州議が虚報拡散によって議席を剥奪されたことも語っていたためだ。
また、選挙高裁が6対1の大差で決めた判決を最高裁判事が単独の司法判断で覆したことにも疑問の声が出ている。6票の内3票は、エジソン・ファキン、ルイス・ロベルト・バローゾ、アレッシャンドレ・デ・モラエスという、同僚の最高裁判事によるものだ。
今回の決定には最高裁内でも不満の声があがっている。CNNブラジルの取材に答えた複数の最高裁判事は、今回の司法判断を最高裁内の全体投票にかけるよう提案している。最高裁判事が単独で出す司法判断は暫定的なもので、控訴や全体審理で覆り得る。カシオ判事は控訴されたら第2小法廷で審理する意向だが、他の判事や検察庁が全体審理を求める可能性が高い。
カシオ判事はボルソナロ大統領が最初に指名した最高裁判事で、大統領よりの判断が目立つ。最高裁全員更迭などを訴え、被選挙権を8年間剥奪された大統領派のダニエル・シルヴェイラ下議に関する全体審理でも唯一、同下議を擁護した。
カシオ判事は同日、不正献金受領などで選挙高裁が5月に罷免した大統領派のヴァルデヴァン・ノヴェンタ下議(自由党・PL)も復職させている。