《ブラジル》最高裁が罷免州議の処分を全体審理へ=カシオ判事の判断に反発続出=虚報拡散に対する処罰強化

【既報関連】最高裁のカシオ・ヌネス・マルケス判事が、虚報拡散で罷免されたボルソナロ大統領派州議への判決を差し止める司法判断を行ったことは最高裁内で強い反感を招き、7日に全体審理を行うことになった。同件で最高裁内でのカシオ判事孤立化が進んだとされ、判断が覆る可能性が高い。3〜6日付現地紙、サイトが報じている。
カシオ判事が2日にパラナ州議のフェルナンド・フランシスキーニ氏(ウニオン)への判決を覆したことは、最高裁、さらには司法界全体に強い波紋を投げ掛けた。同州議は2018年の選挙中に証拠もなく「票集計に不正があった」との虚報を流し、昨年10月に議席剥奪となった。選挙高裁での投票は6―1で圧倒的だった。
ブラジル政治・選挙権アカデミー(Abradep)のコーディネーター、ルイス・フェルナンド・カーザ・グランデ・ペレイラ弁護士も、選挙高裁が昨年、支持者による虚報の大量拡散容疑によるボルソナロ氏とアミウトン・モウロン氏のシャッパ(連立名簿)の処分を否決した際、「今回は不測の事態だったが、虚報拡散は経済や社会にも悪影響を及ぼしうるから、今後は厳罰に処すと明言していた」と語る。
また、次期選挙高裁長官のアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事も3日、カシオ判事が「ネット上での虚報は処罰対象にはならない」としたことに対し、「22年の選挙ではSNSも従来のメディアと同等の扱う」と明言。選挙高裁が、いかなる場合でも選挙に関する虚報拡散は厳格に扱う意向であることを強調した。
モラエス判事はフェイクニュース関連の捜査担当で、ネット上の言動処分には常に厳しい姿勢を示している。3日も、「言論の自由」を唱えて最高裁解体などを叫んだ急進左派の勤労理念党(PCO)のネット上のアカウントを全て凍結する処分を行っている。
3月のダッタフォーリャ調査でも、虚報が「選挙結果に影響を及ぼしうる」と答えた人は60%で、「及ぼさない」の22%を大幅に上回った、さらに、51%が「虚報拡散者のアカウント凍結処分などを行うべき」と考えていることも明らかになっている。
カルメン・ルシア判事は4日、フランシスキーニ氏に対するカシオ判事の司法判断を大法廷に持ち込む手続きを行った。ルイス・フクス長官がそれを了承し、7日に全体審理を行うことになった。
この反応はカシオ判事の判断直後から予想されていた。また、最高裁内部で同判事の孤立化が進んでいるという。ジョーベン・パン局は、カシオ氏は「ピクニックに誘われない状況」と呼び、それを揶揄した。カシオ氏の孤立化は、同様にボルソナロ大統領から指名を受けたアンドレ・メンドンサ判事さえ有罪票を投じたダニエル・シルヴェイラ下議の最高裁判事全員更迭発言に対して無罪票を投じたときから、進んでいたとしている。
また、選挙高裁が基本的な規律を順守していないとの別の申し立て(ADPF)担当との理由でカシオ氏にフランシスキーニ氏の控訴を担当させ、予想されうる事態を招いてしまったことで、最高裁内でのフクス長官への風当たりも強くなったと言われている。