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《ブラジル》大統領令で総弁護庁に権限付与=バラマキ法案の成立迅速化狙う=識者が批判「本来は選挙高裁」

2022年6月29日

ボルソナロ大統領(Wilson Dias/Agencia Brasil)
ボルソナロ大統領(Wilson Dias/Agencia Brasil)

 ボルソナロ大統領は27日、選挙年である今年に連邦政府が行う行動に関する最終決定を総弁護庁(AGU)に行わせるという内容の大統領令を出した。これは現在、連邦政府が行っている「バラマキ」とも取れる、福祉優遇政策を違法とされずに施行するためのものだ。27、28日付現地紙、サイトが報じている。
 大統領令11104号は27日に連邦政府官報に掲載された。それによると、「選挙年にあたる任期最終年の連邦政府の行うことの合法性、合憲性に関する最終決定はAGUが行う」と定めている。
 この背景には、ボルソナロ政権が現在画策中の福祉政策拡充がある。連邦政府は現在、連邦議会と掛け合い、ガス代補充策の「ガス・アウシリオ」の拡充や、トラック運転手に1千レアルを支給する新「アウシリオ」創設のための法案準備にとりかかっている。さらには、福祉政策「アウシリオ・ブラジル」の支給月額を現状の400レアルから600レアルにあげる意向も表明している。
 これらはいずれも選挙での大統領のイメージアップを狙った政策だと見られている。ただし、この時期のアウシリオ創設などは合法性、合憲性に疑問符が付いている。特に問題なのは70〜90万人とされるトラック運転手へのそれで、「特定層優遇」であることや創設に伴う財源確保などの問題で違法となる可能性がある。ロドリゴ・パシェコ上院議長らはそれを疑問視し、「燃料代高騰分を緩和させる緊急ファンドの方が良いのではないか」との声を上げていた。
 この大統領令は、そうした疑問の声に対するボルソナロ大統領からの回答と受け止められている。大統領としては、緊急の福祉政策のための法案の成立が合法性を問う声によって遅れることを避け、法案承認を円滑に進ませたいところだ。
 これらの法案の存在は、世論調査でルーラ元大統領に20%近くの支持率の差をつけられているボルソナロ氏にとっては不可欠なものだ。特に、アウシリオ・ブラジルはルーラ政権時代の「ボルサ・ファミリア」より支給額を大きく上げても世間からはルーラ氏への評価が高いとの統計結果も出ており、さらに上げたいところだ。
 だが、この大統領令の有効性を疑問視する声はすぐにあがっている。選挙法が専門の弁護士リカルド・ペンテアド氏によると、「AGUは憲法上では大統領の行動に関する法的な側近に過ぎない」とし、「そのような立場の職務の機関に選挙法に違反するかしないかを決める権限はない」として、この大統領令に対する疑問を唱えている。
 また、ジャーナリストのミリアム・レイトン氏も「仮にAGUが連邦政府に有利な見解を出したからと言って、それが合法になるとは限らない」とし、連邦政府が希望する通りの法案が最終的に合法かどうかを決めるのは選挙高裁との見方を示している。
 選挙年に特定の層だけを優遇した法案は違法とされている上、新しいアウシリオ創設や支援内容拡充のための財源確保がなされていなければ、財政法にも問われかねない。


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