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文協文芸委員会=日本の俳句研究者らと懇談会=「自ら季節を探すのが当地流」

2022年9月15日

後列左から1人目が文協文芸委員会の永江ネイディ久恵委員長、4人目が白石准教授、5人目が末永准教授
後列左から1人目が文協文芸委員会の永江ネイディ久恵委員長、4人目が白石准教授、5人目が末永准教授

 ブラジル日本文化福祉協会(文協)文芸委員会は、日系ブラジル人俳人増田恆河とポ語俳諧研究のため来伯した白石佳和(よしかず)高岡法科大学准教授、末永エウニセ愛知県立大学准教授と全伯俳句大会関係者らを招いての懇談会を8月30日午後、サンパウロ市リベルダーデ区の同協会会議室で開催した。
 懇談会では、全伯俳句大会実行委員長の吉田しのぶさんが「人数こそ26人と少なかったが、りっぱに開催できた」と大会概要を報告。「日本から俳句をやっていたが、ブラジルに来た最初の10年はどん底の開拓生活で俳句どころではなかった。10年かかってようやく『農業と共同』誌を定期購読できるようになり、そこに俳壇を見つけて投稿をするようになった」と俳句人生を振り返った。
 白石准教授は「増田恆河はポ語俳諧を広める際、それまでは軽視されていた季語を入れることを強調し、日本的な考え方を強めた。ポ語俳諧が広まっているのと同時に、皆さんのような日本語俳句が続き、ブラジルには豊かな俳句文化のバリエーションができている。そんな活動が広まっていることを研究し、日本で知らせていきたい」と研究主旨をのべ、季語や歳時記について質疑応答をした。
 当地には「ブラジル歳時記」(俳誌朝陰主宰者、佐藤牛童子氏編著)を始め、山本健吉氏の俳句歳時記、梶原北民氏のものもあり、アマゾン地方には「アマゾン季寄せ」(トメアスー移住地編)もあり、独自の季節感表現が工夫されてきた積み重ねがある。
 コロニア俳人佐藤念腹の直(じき)弟子の小斎棹子さんは「四季がはっきりした日本と違って、ブラジルは漠然とした移り変わりしかない。それでも季節は移っていく。でも向こうから教えてくれない。だから自分から探していくしかないのが、ブラジルの季節感」と年季の入った実感を説明した。
 また、小斎さんは「これだけ俳句が広まったのは念腹先生のおかげ。私が始めたころは大会といえば150人も参加する時代だった。この日ばかりは日本語で詠めるという熱気がこもった雰囲気だった」と振り返り、西谷律子さんも「多い時には300人という時代もありましたよ」と語った。
 鈴木文子さんは「私は念腹先生の孫弟子。木陰、みちのく、黒潮、老荘の友俳句教室に通って忙しく暮らしている」と述べ、田中美智子さんも「俳句歴は約20年。俳句を勉強することで、日本の四季の繊細さをしみじみと噛みしめています」と述懐した。
 串間いつえさんは「30年ぐらいやっているが、難しさが分かったのはつい最近です。3冊あるブラジル歳時記を見ながら、日々勉強をしています」とのこと。2世の石井かず枝さんも「昔からやりたかったが、チャンスがなかった。5年前からようやくはじめました」などと述べた。
 同大会事務を務めた文協職員の海老澤千佳さん、ルーカス・ベラルジさんらも自己紹介した。

 


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