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ルーラがトランプを厳しく批判=ベネズエラの主権擁護を強調

2025年10月18日

万華鏡1
23年5月、大統領府でマドゥロ氏を迎えるルーラ氏(Foto: Marcelo Camargo/Agência Brasil)

南米ベネズエラを巡る地政学的緊張が高まる中、ルーラ大統領(労働者党・PT)は16日、ブラジル共産党(PCdoB)党大会で演説し、「ベネズエラの未来は国民自身が決めるべきだ」と述べ、米政府による内政干渉を批判し、中南米諸国の主権と自決を擁護する立場を明確に示した。この発言は、同日にブラジル外相が米国側と制裁交渉を開始した直後に行われ、国内外で大きな関心を集めていると同日付ヴァロール紙など(1)(2)(3)が報じた。

ルーラ氏は演説で、国は独自の国柄を持つべきであり、その決定権は国民に帰属すると強調。ベネズエラ国民が自国の未来を決める権利を有することを強調し、トランプ氏の名を挙げることは避けつつも、内政干渉に断固として反対する姿勢を鮮明に示した。

トランプ氏は15日、米中央情報局(CIA)にベネズエラでの秘密作戦を許可したことを公に認めた。武力行使を伴う「致命的」な作戦も含まれる可能性がある。米国は麻薬取締を名目に、ベネズエラの麻薬カルテルへの打撃を強調し、同時にマドゥロ政権の排除を目指す「政権転覆作戦」との指摘も根強い。米政府は8月、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領に関する有力な情報提供者に対し、5千万ドルの報奨金を提示していた。

CIAの活動は過去の中南米での作戦を彷彿とさせるもので、同様の活動はメキシコでも長年行われていると報じられている。ベネズエラ政府は米国の行動を国際法違反と非難し、国連安全保障理事会や事務総長に対し抗議を行う構えを見せている。

同じく16日の演説で、ルーラ氏はベネズエラに加え、米国からの批判を受けるキューバについても言及し、「キューバはテロリストの輸出国ではなく、尊厳ある国の模範だ」と擁護した。米国による中南米への軍事的圧力と介入に反対する姿勢を強調し、地域の自決権尊重を訴えた。

複数の報道によれば、9月以降にベネズエラ沖の公海上で少なくとも5隻の船舶が攻撃を受け、27人の死者を出したとされる。これらは麻薬取締作戦の一環とされるが、国際人権団体からは違法な「即決処刑」として批判されている。現地周辺では米海軍の戦艦8隻と原子力潜水艦1隻が展開しており、カリブ海地域には戦闘機も配備されている。

16日には、米軍の南部軍司令官アルビン・ホルシー提督が辞任を決めたと報じられた。報道によれば、ホルシー氏はカリブ海における米軍の軍事行動に関し、特に民間人への攻撃を懸念し、内部対立があったという。こうした軍内の分裂は、米国の対ベネズエラ強硬策に対する疑念を浮き彫りにしている。

こうした米国の軍事的・諜報的動きに対し、ベネズエラおよびブラジルを含む中南米諸国は強い反発を示している。ルーラ氏は「ブラジルは他国が介入することを容認しない。南米は自らの問題を対話と尊重で解決すべきだ」と訴え、地域の自主性と主権を守る決意を示した。

一方、PCdoB所属のルシアナ・サントス科学技術相も同大会に出席し、「米国は自国を世界の支配者と誤認し、カリブ海および中南米で戦争の気配を強めている」として、ベネズエラに対する威嚇や干渉を厳しく非難。PT党全国代表のエジーニョ・シルヴァ氏も登壇し、トランプ政権を強く非難。同氏は「ブラジルがトランプ政権を通じて受けている攻撃や、中南米諸国が受けている脅威は容認できない」とし、ベネズエラ政府やベネズエラ国民に対する脅迫を非難した。法的手続きや弁解の機会すらなく、ベネズエラ国民が処刑されている事例を挙げ、「これは国際犯罪に該当する」と断じた。

これらの動きは、ベネズエラの政情不安をさらに深刻化させ、地域諸国の主権と安定に対する新たな挑戦となることが懸念されている。


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