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ウルグアイで安楽死法成立=南米で初めて議会立法化

2025年10月17日

万華鏡1
ウルグアイ、南米初の安楽死合法化へ(Foto:Joshua Hoehne/unsplash)

ウルグアイ上院は15日、特定の条件下で安楽死を合法化する法案を可決した。対象は、精神的に健康な成人で、治療不可能な末期疾患にあるか耐えがたい苦痛を抱える人に限られる。ウルグアイ市民および一定の居住証明を有する外国人も利用可能。行政機関は向こう180日以内に、同法の具体的な運用規制を整備する予定だと16日付イスト・エ誌など(1)(2)(3)が報じた。

この法律は「尊厳死法(Ley de Muerte Digna)」と呼ばれ、数年にわたり議会で議論されていた。上院では出席議員31人中20人が賛成し、与党の拡大戦線党の全議員が支持したほか、野党のコロラド党および国民党の一部議員も賛同。下院は8月中旬に同法を承認しており、今回の上院通過を経て、今後は行政機関による細則策定が課題となる。

同法は、成人で精神的に健康な人が、治癒不能かつ回復不可能な病の末期段階にある場合や、病に伴い耐え難い苦痛を抱え、生活の質が著しく低下している場合に限り、安楽死を非犯罪化することを目的としている。同法の適用対象は国籍を有する市民に加え、信頼できる方法で同国に恒常的に居住していることを証明した外国人も含まれる。患者は安楽死を希望する意思を正式に書面で示す前に、いくつかの予備的な手続きを踏むことが義務付けられている。

新法は、医療専門家による安楽死を認めるが、患者自身が処方された致死量の薬を服用する行為は認めていない。米国やオーストラリア、ニュージーランドの一部州のように、余命が6カ月や1年以内という条件は設けていない。

精神的能力の審査については、患者が精神的に判断能力を有することが条件となるが、抑うつ症状などの精神疾患があっても一律に除外されるわけではなく、2人の医師による心理評価を経て決定されることが定められている。

この法制化により、ウルグアイは安楽死を合法とする数少ない国の一つとなった。現在、安楽死を認める国には、カナダ、オランダ、スペインなどが挙げられる。南米では、これまでコロンビアとエクアドルが司法判断により安楽死を非犯罪化してきたが、議会立法によって合法化したのはウルグアイが初めて。チリでは近年、長期停滞していた安楽死法の成立をめぐり活発な議論が再燃している。

尊厳死法の成立を受け、長年にわたり筋萎縮性側索硬化症(ALS)に苦しむベアトリス・ヘロスさん(71歳)は「この国での議論を終わらせる時が来た」とコメントし、安楽死に反対する人に対して「このような状態で生き続ける苦しみを理解していない」と訴えた。パブロ・カネパさん(39歳)は、稀な難病による激しい痙攣に悩まされ、4年前から続く苦痛からの解放を願っている。

世論調査会社シフラが今年5月に発表した調査によれば、ウルグアイ国民の60%以上が安楽死合法化を支持しており、反対は24%にとどまっている。

ウルグアイは社会的にリベラルな政策を推進してきた歴史があり、世界で初めて娯楽用マリファナを合法化し、同性婚や妊娠中絶の合法化も10年以上前に実現している。今回の安楽死法の成立も、こうした進歩的政策の一環といえる。同国は、中南米の多くの国々が強い宗教的影響を受ける中で、公務員の宣誓に神の名を用いることを禁じ、クリスマスを「家族の日」と呼称するなど、世俗的な価値観を貫いてきた稀有な国でもある。

ウルグアイ医師会は公式な立場を表明していないものの、患者と医師双方の権利保護を目的に、立法過程において助言役として関与してきた。安楽死を認める国の一つとなった同国は、中南米で進行中の医療倫理の新たな潮流において重要な一翼を担うことになる。


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