セレソンが日本に歴史的敗北=現地紙「精神的脆弱性浮き彫り」

14日、東京で行われたブラジル対日本のサッカー代表親善試合では、過去一度も敗れたことのなかった〝サッカー王国〟のセレソン(ブラジル代表)が、まさかの2対3の逆転負けを喫した。試合は序盤、ブラジルが2点を先取し、優勢に進んだが、後半に入ると守備の連続ミスで流れが一変。この衝撃的な敗北は単なる一戦の結果に止まらず、26年W杯に向けたセレソンのメンタル面と戦術的成熟度に対する警鐘となったと、同日付エストラなど(1)(2)(3)(4)(5)現地メディアが様々な声を伝えている。
ブラジル国内では、この敗戦に対し、早くも厳しい視線が向けられている。とりわけ守備陣の崩壊ぶりに関しては多くの批判が寄せられ、複数の現地メディアは「守備システムが機能不全に陥り、組織全体が破綻していた」と指摘。DFファブリシオ・ブルーノは日本の1点目のきっかけとなる致命的なパスミスを犯したほか、2点目ではオウンゴールを記録するなど、不安定なパフォーマンスが目立った。
SNS上では「(今回出場しなかった)GKアリソンは、セレソンで3失点した試合は一度もないが、ウゴ・ソウザは初戦でやってしまった」など、過去の信頼される選手との比較で落胆を示す声も目立つ。「チアゴ・シルバは現役である限り代表のレギュラーであるべきだ」とベテラン復帰を望む声も上がっている。
指揮を執ったアンチェロッティ監督は、試合前の会見で「異なる選手をさまざまな戦術の中で試す必要がある。チーム内の競争意識はモチベーションの向上にもつながる」と述べていた。だが、8人を入れ替えた今回のスタメンは連携面で課題を露呈し、特に守備ラインの構築には再考を促す声が高まる。
試合後には精神面の脆さを懸念する報道も相次いだ。中でも、後半に逆転を許した展開については「集団としてのメンタル崩壊」と表現され、スペインやポルトガルなどの欧州メディアもセレソンの精神的な脆弱性を改めて指摘。試合中にカメラに捉えられたMFカゼミーロの険しい表情は、22年カタールW杯のクロアチア戦での敗退の記憶を呼び起こすものだった。
試合後、カゼミーロは「後半はチーム全体が沈黙した。45分間で子どもの頃からの夢を失うこともあるという教訓を得た」と語り、集中力の欠如を反省。セレソンがここ数年続けているPK戦での敗退や、アルゼンチンとの南米予選での大敗も含め、重要局面での精神的な崩れが繰り返されていることを危惧する声は多い。
今回の敗北は単に、初の対日本戦黒星という事実に止まらない。アンチェロッティ体制下での初黒星であり、その試合内容の乏しさが、セレソンの現在地を浮き彫りにした。特に後半は試合を通じて主導権を完全に日本に握られた形となり、ブラジル守備陣の未成熟さを如実に露呈した。
他方、この敗戦を「有意義なもの」とする見方もある。アンチェロッティ監督にとっては、現時点での選手層や戦術適応力を評価する上での貴重な材料となり得る。特に、強豪国との対戦が限られる中で、組織的に整備されたアジア強豪との実戦経験は、W杯本番を見据えた布石ともなり得る。
ただし、楽観は禁物だ。韓国戦での5対0の大勝によって高まった国内の期待感は、今回の敗戦によって一気に冷や水を浴びせられた形だ。欧州メディアが〝ジョゴ・ボニート(華麗なサッカー)〟の復活を囃し立てていたのも束の間、実際のチーム状態は依然として構築途上であり、アルゼンチン、スペイン、フランスといった他国と比べても成熟度において見劣りする部分は否めない。
セレソンは11月もアフリカ勢(セネガル、チュニジア)との親善試合が予定されており、来年前半には欧州チームとの対戦も想定と報道されている。W杯本番まで1年を切った中、残された機会でどんなチームを築くのか。今回の敗戦は、貴重な教訓を与えたようだ。