アルゼンチン=外貨準備枯渇で残高7億ドル=危機でもミレイはロック熱唱

アルゼンチン経済省は7日、自国通貨ペソの安定を図る目的で、6営業日連続でドルを売却し、国庫のドル残高を約7億ドルにまで減少させたと推測される。アルゼンチン中銀は外貨準備を保有しているものの、国際通貨基金(IMF)との協定により、その使用は制限されている。このため、米国からの金融支援を模索しており、米国財務長官は支援パッケージの提供を約束したが、具体的な時期や規模を明らかにしていない。通貨危機は続いており、11月に控える5億ドルの債務返済と今月26日の国政選挙を直前に経済不安は一層深まっていると7日付オ・グローボ紙など(1)(2)が報じた。
市場関係者によれば、アルゼンチン政府は為替市場介入の一環として、直近6営業日で合計約15億ドルを売却しており、7日は単日で約2億5千万~3億3千万ドルの売却が行われたとみられている。
中銀が保有する外貨準備は民間推計で約100億ドルとされるが、IMFとの合意により、為替相場が許容された変動幅(現在は1ドル=943〜1484ペソ)を逸脱しない限り、それらの資金を市場介入に使用することは認められていない。中銀は9月に3度の市場介入を実施し、11億ドルを売却したが、足元では経済省の資金を主に用いて為替防衛を行っている。
政府は公式にはドル売却の詳細を公表しておらず、市場ではアルゼンチンの為替対応能力に対する懸念が強まりつつある。だから、米国との二国間交渉が注目されており、米財務省のスコット・ベッセント長官は金融支援パッケージの提供を検討する意向を示した。これを受け、アルゼンチンのルイス・カプト経済相とサンティアゴ・バウシリ中銀総裁がワシントンを訪問し、米政府高官らとの協議に臨んでいる。
ただし、支援の内容や時期、規模は未定で、市場の不安定感は続いている。政府は為替介入と並行して、国内のドル需要を抑制するための規制も強化。ドルの再販を90日間禁じる措置を再導入したほか、通貨先物契約の売却を増やしているものの、十分な効果は見られていない。
実勢為替レートの乖離も拡大しており、非公式市場におけるドルはすでに1ドル=1500ペソを超え、公式レートの1429・5ペソを上回る。通貨先物市場では、向こう12カ月間でペソが最大60%下落するとの見通しが織り込まれており、インフレ率予測を大幅に上回る水準だ。
11月には5億ドル規模の対外債務償還が予定されており、国際金融市場からの信認回復が急務。ミレイ政権は26日の国政選挙を控え、政権運営の正当性を問われる局面にある。先月実施された州レベルの選挙では与党が大敗を喫しており、財政・金融政策への市場の懸念は一段と強まっている。
7日時点での市場データによると、ドル建て国債は下落傾向にあり、35年償還の債券は1ドルあたり約56セントで取引され、前日比で1セント近く値を下げた。ブルームバーグが集計した指標価格によれば、国債の利回りは依然として高止まりしており、外資による資金調達環境は厳しさを増している。
一方、この経済混迷の中でミレイ大統領は6日、新著『奇跡の構築(La construcción del milagro)』の出版記念イベントを開催。このイベントではロック歌手スタイルで熱唱し、政治的支持者の士気を鼓舞した。(3)
ミレイ氏は「キルチネル主義は一度の勝利を手にしたに過ぎない。戦いはこれからだ」と述べ、政敵クリスティーナ・キルチネル元大統領を揶揄する歌詞を用いるなどして、強硬な姿勢を強調した。
同氏は世界の左派勢力を批判し、過去に起きたブラジルのボルソナロ前大統領や米国のトランプ前大統領に対する暗殺未遂事件を引き合いに出して攻撃を展開。「左派勢力は議論に負けると暴力に走る。ボルソナロを暗殺しようとしたし、トランプも同様に標的にされた。コロンビアのミゲル・ウリベやインフルエンサーのチャーリー・カークもその犠牲になった」と述べ、左派の暴力的手段を批判した。
ミレイ氏は政権発足からの成果を強調し、インフレ率が23年12月の25・5%から今年8月には1・9%に低下したことや貧困率改善をアピール。「我々はまだ道半ば」と述べ、支持者に結束を呼びかけた。