中国BYD=「30年までに国内最大に」=時速500キロ、スーパーカーも

ブラジル国内で、わずか3年足らずの間に15万台以上を販売し、顧客満足度でも高評価を得ている中国電動車(EV)メーカー「BYD」は、2030年までにブラジル最大の自動車ブランドに成長すると豪語している。新たに導入する高級車「デンザ」や、価格が250万ドル(約3億8千万円)を超えるスーパーカー「ヤンワンU9エクストリーム」など、次々に発表される新モデルは業界の注目を集め、同社の急成長を後押ししていると8日付エスタード紙(1)が報じた。
24年におけるBYDの売上台数は約7万7千台に達し、3年で顧客の信頼を勝ち取った。同社ブラジル法人のアレシャンドレ・バルジ副社長は、「BYDは30年までにブラジル最大の自動車ブランドになる」と明言しており、その急成長は業界内外で注目を集めている。
特に注目されるのは、同社が現地生産を開始した新工場だ。9日、総額55億レを投じて、北東部バイーア州にブラジル初の自動車製造工場を開所。さらなる生産能力の拡大と、地元経済への貢献が期待されている。新工場では、同社の最初の生産ロットである「ドルフィン・ミニ」、SUV「ソング・プロ」、セダン「キング」の3モデルを製造する。
バルディ氏は「新工場はBYDの長期的なブラジル市場へのコミットメントを象徴するものだ。現地生産が進む中で価格の安定化と、ブラジル内でのEVの普及が加速すると確信している」と述べた。
これに加え、BYDは高級車市場にも本格進出しており、「デンザ」ブランドを立ち上げた。デンザは、11年にメルセデス・ベンツとのパートナーシップにより創立され、現在ではBYDの高級車ラインとして位置づけられている。
このブランドではデザイン性と高性能を兼ね備えたEVを提供し、ブラジル市場でも高価格帯の消費者層をターゲットにする。デンザは車両価格が50万レ(約1415万円)を超えることが予想され、特に「B5 SUV」の導入が注目されている。
BYDはスーパーカー市場にも参入しており、「ヤンワンU9エクストリーム」をブラジルに導入することを発表。この車両は、四輪電動モーターを搭載し、最高速度は時速500キロに達するという驚異的な性能を誇る。価格は250万ドルを超える見込みで、国内には1台のみが販売される予定だ。このスーパーカーは、BYDが高性能および高価格帯市場においてその存在感を確立するための重要な一歩となると考えられる。
バルジ氏は、これらの新モデルがBYDの急成長を支える重要な要素であり、特にEV市場の競争が激化する中で、同社が差別化を図るために重要な役割を果たすと述べる。「我々はEV市場の革命を起こした。ドルフィンの発売によって価格が大幅に引き下げられ、他の競合他社も値下げを迫られている」と強調した。
BYDは、EV購入に関して消費者の最大の関心事である価値低下の問題にも取り組んでおり、「ドルフィン・ミニ」の値下がり率が7・8%とされ、競合車種であるフォルクスワーゲン「ポロ」が17%の値下がり率を記録したことを取り上げて、消費者に対して高い安心感を提供している。
一方で、ブラジル内での外国メーカーとの競争は激しく、BYDはブラジル市場に参入するために、特に長年の実績を持つ企業との対立も経験してきた。BYDは、中国からの部品輸入に対する税制の変更を求め、政府との間で交渉を行った。最終的に政府は、部品を輸入して現地で組み立てるノックダウン形態(CKD/SKD)の車両に対する免税措置を採用し、業界全体のバランスを取る形となった。この税制変更については競合他社からの反発もあり、激しい議論を巻き起こした。
その中で、BYDはブラジル国内での自社ブランド確立に向け、さらに投資を続ける考えだ。バルジ氏は「我々はブラジル市場を最も重要な市場の一つと位置づけており、向こう数年間でさらなる拡大を目指す」と語り、工場の設備強化や新車両の投入を進めていく予定だという。